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子育てコラムシリーズ NO.55

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千葉県山武市

■「神様からの授かりもの」
山武市立成東中学校 養護教諭 小川雅代
私は、看護師と養護教諭の資格をもち、現在は養護教諭として中学校に勤務しています。子どもが一歳になったら病院で働きたいと思い、保育園の入園手続きをしましたが、三年間待機のままでした。社会から拒絶されたようで苦しくて、子育てが重く感じました。たぶん自分のことしか考えられなくて、子どもと一緒に生きていくことが実感できていなかったのだと思います。二歳のけんちゃんに「ママ、もっと笑って。ニコってするんだよ。」と言われたときは、私を心配してくれたのだと涙があふれました。長男のけんちゃんと長女のちいちゃんのことをお話します。

◇泣き虫けんちゃん
葉市保健所で仕事をするため、無認可保育園にけんちゃんを預けました。けんちゃんは保育園に預けた瞬間から泣き始め、お昼まで泣いていることが多いと聞き、そんなに泣かせてまで働く必要があるのか悩みました。その悩みを保育士さんに相談したところ、「子どもは、神様からの授かりものと言われるけれど、預かりものだと思ってください。いずれ神様に返すものです。お母さんのものではないし、思い通りにもなりません。言うことも聞きません。そういうものですよ。けんちゃんがずっと泣いているのは、お母さんの気持ちが伝わるからです。預けるときに、『大丈夫かな。心配だな。』と思っていませんか。働くと決めたからには、うちの子は大丈夫。きっと楽しく過ごしているはずと思い込んでください。明日は、大丈夫ですよ。ちょっと泣いてその後すぐに笑っている姿を想像してください。」私の気持ちを見透かされてしまい、みんな同じように悩んで保育士さんに相談するのだろうと思いました。
それから私は、大丈夫と自分に言い聞かせて、けんちゃんにも言い聞かせて、保育園で泣く回数が減りました。他の子どもは泣かないのに、どうしてうちの子は、みんなと同じようにできないのだろうという気持ちが、苦しくて情けなくて誰にも話せなかったのです。
けんちゃんへ、一歳から他の子どもと比べて、けんちゃんを責めてしまって、ごめんね。

◇バスを降りたらよーいドン!
幼稚園に入園したけんちゃんは、幼稚園バスに乗って元気に登園していました。ある日の帰り道、幼稚園バスから降りた途端、リュックを放り投げて、ブレザーを脱ぎ捨て、自宅をめざして全速力で走りながら服を脱ぐのです。私もちいちゃんを抱きかかえ、投げ捨てられたリュックや洋服を拾いながら走ります。全然追いつけません。その競走を何日も続けるうちに、追いかけるから逃げるのかなと思い、洋服を拾いながらゆっくり帰ると、ほぼ変態(パンツと靴下と靴をはいて笑っている)姿で家の玄関に立っていました。
翌日からちいちゃんは自分で走らせました。変態になっていくけんちゃんを追いかけるため、私も全速力で走ります。私を追いかけて泣きながら走るちいちゃん。家に全員が到着すると、泣いていたちいちゃんも大笑いしています。まずい。ちいちゃんも真似しようとしている。走り続けた三カ月間、やっと戦いが終わり、しれっと普通に歩いて帰るようになりました。
ちいちゃんへ、泣きながら頑張って走ったね。置き去りにしてごめんね。でも足が速くなり、ずっと一等賞なのは、すごいことです。えらいね。

◇保育士さんへ
けんちゃんとちいちゃんは、神様から預かって育てていますが、私の想像を超えることばかりです。どの状態で神様に返せばいいのか答えが見つかりません。ただただ、可愛いなあと見守っているだけです。
(※子どもの名前は仮名です。)

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