■「親業講座」から学んだこと
家庭教育指導員 植草 年子
親業講座とは、正式には親業訓練講座といいます。アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士(1918~2002)が開発したコミュニケーションプログラムです。「親業」でいう子育てとは、「一人の人間を生み、養い、社会的に一人前になるまで育てる」ことです。簡単に言えば、子育てにおいて子どもとの関係がうまくいく方法(コミュニケーションスキル)を学ぶ講座です。今回は、私が親業講座から学んだことをお伝えします。
◆聞く
「親業」では、話の聞き方を詳しく学びます。「話を聞くこと」これは普段できているようでなかなか難しいことです。ついつい大人の経験から、「こうすればいい」と親が指示したり、「○○ちゃんみたいに、もっとがんばりなさい」と人と比べて励ましたりしたことはありませんか。説教、あきらめ、嫌味、押し付けの意見など…親の権威で物事を収めることも。
実は私もそのような経験があります。娘がスイミングに行くのを嫌がっていた時、「あなたはすぐ風邪をひいて熱をだすから、水泳をやった方がいいとお医者さんも薦めていたでしょ。スイミングに通って丈夫になろうね」と、娘の話も聞かず、強引に通わせていました。
子どもが小さい時には、親の権威で言うことをきかせられても、小学校高学年、中学生となると、そうもいきません。そういう時こそ、この「話の聞き方」が効力を発揮します。良い聞き方としては、相づちをうちながら黙って聞くということです。つまり子どもの気持ちを良くも悪くもくんでやることです。それは、何でも子どもの言いなりになるのとは違います。子どもが苦しんでいる時は、まず、しっかりと子どもの気持ちを受け止めてやるということです。
◆話す
では、いつ親の考えや気持ちを伝えるか。一番良いのは、子どもも親も気持ちに余裕がある時(心にわだかまりがなく明るい時)です。この時は何を言っても子どもに入っていきます。親として言うべきことはしっかりと言ってよい時です。
しかし、いつもそういう時ばかりとは限りません。親自身も自分の機嫌が悪い時もあります。その状態を親自身が自分で意識できるかが重要です。自分の気持ちに余裕が無い時こそ感情的にならずにIメッセージ(「私は」が主語になる言い方)で伝えるとよいと言います。「私は、あなたが○○すると○○なので、○○なのよ」(子どもの行動が自分にどういう影響があるか、そのためにどんな感情になるか)ということを冷静に伝えます。しかしお互いに機嫌が悪い時はやめましょう。声をかけるタイミングはとても重要になります。
◆対立を解く
子どもが要求することと親の気持ちが折り合わないときはどのように解決していったらよいか。これは、どちらかが優位にたって「勝つ」のではなく、お互いの気持ちを尊重して解決していく方法です。親も子どもも自分の意見や気持ちを伝え、何がベストなのか、一緒に考えます。
(参考「親業訓練協会ホームページ」より)
このように親業では、コミュニケーションのとりかたを、その場面に合わせて学びます。実際に演習も行います。ここでは、親業の概観しか紹介できませんでした。機会がありましたらぜひ、ご参加いただき体験していただきたい講座です。
子育ては本当に難しいものです。親が思うようにはなかなかなりません。なぜなら、子どもは親とは別の人格を持った一人の人間だからです。今が大変でも、子どもは成長する過程で変わっていきます。親が子どもとしっかりと向き合うことで子どもは自分が大切にされていると感じます。それは子どもが生きていく上で大きな支えになります。どうか、子育て中の皆さまが子どもを愛し慈しみ、お子さまが健やかに成長できますよう願っています。
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