■半世紀以上磨き続けた職人の技
三良(みよし)建設(株)代表取締役・建築大工
千葉二三男(ちばふみお)さん
「市内にあるほとんどの学校や公共施設に携わりました」と話すのは、市内で60年以上に渡り建物の建築や修繕を行う傍ら、職業訓練指導員として後進の育成に貢献した「松戸市特別技能功労者(松戸マイスター)」の建築大工・千葉二三男さん。
昭和13年生まれの千葉さんは、終戦後の日本が貧しかった時代を岩手県で過ごします。中学卒業後は奉公に出て大工の技術を学び、
昭和33年に「ボストンバッグ1つで上京しました」と、地元より賃金が高かった松戸市に仕事の場を移しました。市内の建設会社で働きながら通信教育で建築士の資格を取得するなど、知識の習得と技術の研鑽(けんさん)に励み、昭和45年に同じ岩手県出身の大工仲間と市内に三良建設(株)を設立。高度経済成長とともに発展した松戸市の建築物にも多く携わり、今年で創業54年目の息の長い会社に成長させました。しかし、全てが順風満帆だったわけではありません。「赤字のときもあり、目減りする資金を見る度に経営の大変さを痛感した」と話す千葉さんは、利益を上げるために夕食後に寝たあと、22時には起きて作業場で仕事をしたそうです。当時2人分の仕事を1人でこなしたという千葉さんは、長い大工人生で直面した数多くの苦労を乗り越えてきました。
千葉さんの信念は“正確かつ迅速に仕事をこなして、困っている人を早く助ける”こと。丁寧なもの作りと対応の早さで誠意を見せることや、人とのつながりを大切にしながら実直に仕事をしてきました。そんな建築大工一筋で研鑽を続けた高い技術が評価され、今年2月に松戸市で歴代9人目となる「特別技能功労者(松戸マイスター)」の称号が贈られました。表彰について「一生懸命働いただけ」と謙虚な姿勢の千葉さんですが、部屋の一番目立つ場所に飾られた記念楯からは、地域に貢献してきた職人の誇りが垣間見えました。
「今後は会社や会社の人たちのために残された時間を使いたい」と話す千葉さん。現在は経営者として会社を運営する立場ですが、さまざまな現場で活躍した建築大工の仕事を「喜ばれて楽しかった」と振り返るその表情は、“松戸マイスター”の名に相応しい凛とした職人の顔でした。
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