■栄町に伝わるヘビの昔話(二)
それから二〜三か月の月日が過ぎていきました。あれほどひどかった娘の傷は、すっかり治ってしまいました。そして明日はいよいよ退院という日になりました。「長らくお世話になりました。お陰さまで傷はすっかりよくなり、明日はいよいよ退院させていただくことになりました。ありがとうございました。そこで、最初の約束通り、明日は、私の素性をお知らせいたします」といって娘は部屋に戻りました。
その日の真夜中のことでした。医者はゴーン、ゴーンという大きないびきに、びっくりして飛び起きました。それはあの娘のいる部屋の方から聞こえてくるのです。医者は娘との約束のあることも忘れて、部屋を開けてしまいました。すると、なかには娘の姿がなく、大きな白蛇が部屋いっぱいにとぐろを巻いていたのです。医者は、「あっ」と言ったまま気を失ってしまいました。「あっ」という医者の声にびっくりした家族の者が駆けつけた時には、その部屋はもう空っぽでした。あれだけ大きく聞こえたいびきも家族の誰ひとり気づいた者はいなかったということです。
後で分かったことですが、その白蛇は、対岸の立木村(いまの利根町立木)にある明神様の御神木の中に住んでいた主で、御神木が途中まで切られた時に怪我をしたのだということです。(来月号のお話は眼助大師です。)
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