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歴史資料館 連載三七六

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千葉県鋸南町

■浮世絵の中の猫
幕末の文久二年(一八六二)江戸で麻疹(はしか)が大流行しました。この年は戌年(いぬどし)だったため、戌の病(やまい)とも呼ばれ、浮世絵では病除けのための「はしか絵」という絵が出されました。「由縁(ゆかり)の友戌の見舞(みまい)」という浮世絵では、病にふせった戌の見舞に、仲間の十二支(じゅうにし)の動物たちが見舞いに訪れている絵です。こうした擬人化(ぎじんか)した動物たちの浮世絵も幕末から明治にかけて多く出されました。
ところで、十二支にはなぜ猫(ねこ)が入っていないのでしょうか。ある時、神様が「次の一月一日の午前0時に集まった先着十二匹の動物を十二支にしようとお触(ふ)れを出します。ところが鼠(ねずみ)が仲の悪い猫に違う日にちを教えたため、猫は入れなかったというのが昔話にあるそうです。
ちなみに鼠はちゃっかり牛の頭に乗って行き、牛がゴール寸前に頭から飛び降りて一着になったとか。それ以来、鼠と猫はさらに仲が悪くなります。
しかし、猫は日本人にとって古くから可愛がられた身近な動物。浮世絵にも多く描かれます。特に歌川国芳(くによし)は無類の猫好きで、常にかたわらに十数匹の猫を飼っていて、時に子猫をふところに入れて浮世絵を描いていた逸話(いつわ)があります。猫を擬人化した作品も多数あります。
明治のあそび絵という子供向けの浮世絵には猫の世界を描いた作品が多く、歌川国利(くにとし)らは「流行猫の温泉」「猫生徒たわむれあそび」「猫の浅草遊び」などに、擬人化された猫たちを楽しく生き生きと描いています。「ああいいお湯」とくつろぐ猫の美人や大好物のうなぎに舌つづみうつ猫の家族、運動会で玉入れや二人三脚をがんばっている猫の子どもたちなど。
菱川師宣記念館では企画展「いきもの大集合浮世絵に描かれた動物たち」を九月三日まで開催中です。紹介した作品の他、楽しい浮世絵が多数紹介されています。ぜひご来館ください。

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