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防災の豆知識 第10回 津波てんでんこ(2)

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千葉県鋸南町

二〇一一年の東日本大震災以降、防災の場でよく聞く言葉に「津波てんでんこ」というものがあります。「津波が来たら家族のことでさえ気にせず、自分の命を守るために、てんでばらばらに逃げろ」という意味です。けっこう利己的で冷たい言葉ですが、本当でしょうか?
この言葉には、4つの意味があるそうです。
(1)自助原則の強調(自分の命は自分で守る)
(2)他者避難の促進(自分が逃げることで周囲に避難の必要性を知らせる)
(3)相互信頼の事前醸成(お互いに助かる措置を行うことで共倒れを防ぐ)
(4)自責感の低減
いずれの意味においても、各当事者は最善を尽くすことを前提としているとともに、決して他者との協働・協調を否定するものではありません。たとえて言えば、「一人で避難するのが困難な私は、ご近所さんと普段から助け合っているので、災害時にも助けてもらえるように準備しています(自助・共助の準備)」なので「私は、近くにいる人達と協力して避難するので、わざわざ私を助けに来なくて良いです(相互信頼の事前醸成+他者避難の促進)」、「もし、私が亡くなっても、最善を尽くした結果なので、誰の責任でもないですよ(自責感の低減)」といったところです。「周りを見捨てて自分だけ生き残る、諦める」のではなく「全員が最善を尽くしあうことで被害の局限を図る」が正しい意味ではないかと思います。
この言葉を紹介した三陸の災害史研究家の故山下文男氏は、「津波てんでんこ」をもって「自分たちの地域は自分たちで守る」を表す言葉であると著書でも述べています。

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