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長南町認知症サポート医(上野秀樹先生)の認知症見立て塾【第27回】

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千葉県長南町

今回は、日本で承認される見通しとなったアルツハイマー型認知症の新薬「レカネマブ」についてお話しします。
本連載の中でも何回か抗認知症薬についてとりあげてきましたが、今までの抗認知症薬と異なり、レカネマブはアルツハイマー型認知症の原因物質の一つアミロイドβタンパクを除去する薬剤という点で、とても画期的なものです。「臨床試験では認知症の進行を18ヶ月間で27%遅らせることができた」ということです。これを聞いて、少し疑問に思われた方もいるかもしれません。「原因物質を除去する薬であれば、もっと効果があっていいのでは」と。詳しく説明しましょう。
まず、アルツハイマー型認知症の発症・進行のメカニズムを理解しましょう。
アルツハイマー型認知症では、もの忘れなど認知症の症状が出現する20-30年前から、脳にアミロイドβタンパク質が集合した老人斑が蓄積します。しかし、これだけでは認知症の症状は出ません。
その後に何らかのきっかけで、神経細胞の中に神経原線維変化という異常な物質が蓄積するようになり、このために神経細胞が機能低下し、脱落・減少します。このために脳が萎縮し、もの忘れなどの認知機能障害が出現してくるのです。
また、アルツハイマー型認知症では、急に認知症になることはありません。健常な状態から、主観的認知機能低下(本人はもの忘れを感じているが、検査上は異常が認められず、周囲の人も気づかない状態)から、軽度認知障害(周囲の人も本人のもの忘れに気づくようになった状態、いわゆる年相応のもの忘れを含む)を経て、認知症の状態に進行していきます。
これらを図示しましょう。

今回のレカネマブは、アミロイドβタンパク質を除去することができる薬です。
なぜ臨床試験の成績が今ひとつだったのでしょうか。臨床試験では、軽度認知障害もしくは軽度のアルツハイマー型認知症の人を対象としました。すでにもの忘れなどの症状が出ている人たちなので、神経原線維変化の蓄積に伴う神経細胞の減少が始まっている状態です。この状態の人に対して、レカネマブを使用してアミロイドβタンパク質を除去しても、神経原線維変化の蓄積を止められないため、アルツハイマー型認知症の進行を完全に止めることはできないのです。また、減少してしまった神経細胞を復活させることもできません。残念ながら、この薬の登場で認知症支援の現場が大きく変わることは難しいかもしれません。
これまでと同様に認知症への理解と地道な努力の積み重ねが重要になるものと思います。

■YouTube「長南町福祉チャンネル」が開設されています。上野先生のこれまでの解説動画はこちらからご覧ください。
※二次元コードは本紙をご確認ください

■上野先生から認知症について学ぶ学習会を開催します。
ぜひご参加ください。
日時:10月18日(水)15時〜16時(要事前申込)
場所:保健センター

問い合わせ(申込先):福祉課包括支援センター
【電話】46-2116

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