今月は、うつ病に伴う妄想を説明しましょう。
妄想とは、
事実ではないが、本人が確信していて、通常の説得では訂正不可能な考え
をいいます。認知症の人では、ものとられ妄想がよく知られています。うつ病でも微小妄想という、「自分の価値を実際よりも過小評価してしまう妄想」が出現します。特に高齢者のうつ病では、微小妄想が認められることがあり、それを見逃さないことが重要です。微小妄想には、心気妄想・貧困妄想・罪業妄想の3種類があります。心気妄想とは、健康面で自分の価値を過小評価してしまう妄想です。実際はそんなことはないのに、自分が重い病気にかかっていると信じ込んでしまったりします。例えばこんなケースがあります。
《70歳男性》
60歳で定年を迎え、現在は夫婦二人で年金生活をしています。
しばらく前から胃がムカムカすると訴え、内科を受診し、胃カメラをしてもらいました。医師から胃には異常がないことを説明されましたが、納得しません。自分は胃がんで、先行き長くないと信じ込んでしまっています。
実際に異常があれば、治療をすることになりますが、異常がないので、医学的な治療の対象にはなりません。本人は苦しさを訴え「こんなに苦しいのに、誰も理解してくれない」と言っています。実際に身体的な異常がないのに、身体的な不調を繰り返し訴える場合には、うつ病に伴う心気妄想の可能性があります。
高齢の方では、ひとつやふたつ、体調不良があることは珍しくありません。こうした体調不良が深い不安と結びつくことで「重い病気にかかっているに違いない」という心気妄想に発展してしまうことがあるのです。妄想なので、通常の説得では訂正されることはありません。このケースでも、医師から胃カメラの結果を説明されても、訴えは変わりませんでした。
うつ病でもっとも問題となるのは自殺です。高齢者の自殺では「病を苦にして」という動機が多く、自殺の前に何らかの身体症状を訴えて、医療機関を受診していることがあります。未治療のうつ病が自殺の原因となることもあります。
身近にいる人が気づいて対応することが重要になります。
次回はうつ病に伴う妄想、貧困妄想についてお話しします。
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問い合わせ(申込先):福祉課包括支援センター
【電話】46-2116
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