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長南町認知症サポート医〔上野秀樹先生〕の認知症見立て塾【第26回】

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千葉県長南町

今月は、うつ病に伴う妄想の3つめ、「罪業妄想」について説明します。これまで紹介した心気妄想や貧困妄想に比較すると、頻度は低いのですが、見逃されていることも多々あり、その重要性は変わりません。罪業妄想とは、自分の社会的価値を実際よりも低く信じ込んでしまう妄想を言います。実際にはそんなことはないのに、取り返しがつかない犯罪・悪事を犯してしまったと信じ込んでしまっているのです。
うつ病で罪業妄想のあるケースです。

《ケース65歳男性》
建設作業員をしている単身の方でした。数ヶ月前から体重減少が進行しているとのことで、悪性腫瘍が疑われ、内科病院にて詳しく検査をしていました。
内科的な異常が見つからず、奇妙な訴えがあるとのことで、精神科的診療のために私が呼ばれていきました。病室に入ると、「精神科医が診察に来る」ということで、数人の親族が待っていました。本人は、ベッドに臥床してさめざめと泣いています。
誰に訴えるでもなく、「おれはとんでもないことをしてしまった。甥の○○くんを殺してしまった」と声を出していました。集まっていた親族の中に本人が殺したと言っている甥がいて、「そんなことないよ、おじさん。おれはこんなに元気にしているよ」と声をかけていました。

このケースでも、実際にはそんなことはないのに、甥を殺害したと信じ込んでいます。また、妄想なので、通常の説得ではその信念が修正されることはありません。目の前に自分が殺したと言っている甥が元気な姿でいるにもかかわらず、その訴えが変わることはありませんでした。
このケースでは、しばらく前に発症したうつ病のために体重が減少し、内科での入院中にうつ病がさらに悪化し、罪業妄想を生じたのでした。私が診察した後、精神科病院に転院の手続きをとり、治療が行われることになりました。
もう一例、罪業妄想のケースを紹介します。
ちょうどスカイツリーが開業した年、スカイツリー開業を伝えるテレビ放送を見ながら、「申し訳ありません。私のせいでスカイツリーは爆発してしまいます。」と家族に向かってずっと謝っていた70歳代の女性がいました。
この方も数ヶ月前にうつ病を発症し、「お金がないから、食事をしてはいけない」などの貧困妄想や「私のせいでスカイツリーが爆発してしまう」という罪業妄想が活発でした。体重減少も目立っていたため、精神科病院に入院して治療していただきました。また、うつ病に伴う仮性認知症も認められ、もの忘れが目立っていましたが、うつ病から回復後は認知症も改善し元気な姿で退院されました。
うつ病に伴う仮性認知症は、「治る」可能性が高いということがポイントです。

◆YouTube「長南町福祉チャンネル」が開設されています。上野先生のこれまでの解説動画はこちらからご覧ください。
※二次元コードは本紙をご確認ください

◆上野先生から認知症について学ぶ学習会を開催します。
ぜひご参加ください。
日時:9月20日(水)15時〜16時(要事前申込)
場所:保健センター

問い合わせ(申込先):福祉課包括支援センター
【電話】46-2116

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