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長南町認知症サポート医〔上野秀樹先生〕の認知症見立て塾[第33回]

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千葉県長南町

今月号は、認知症の症状が大きく回復した方のお話です。
82歳の女性の方です。
高校教員をしていたのですが、職場結婚して退職。子どもたちを育てあげてからは、A市の自宅で学習塾をしていました。夫が亡くなってから約30年間は単身生活だったのですが、学習塾では地域の子どもたちが集まり、とても賑やかであったそうです。80歳になったのを機に、何十年も続けていた学習塾を閉めることにしたそうです。さらに同じ頃に運転免許証を自主返納したため、行動範囲が狭くなりました。また毎日のように会いに来ていた息子さんが転勤したため、会う機会が減ったことも重なりました。日常生活が大きく変わり、ひとりぼっちでいる時間が増えてしまったのです。
その後しばらくして、長南町在住の妹さんは電話での応対に違和感を感じるようになりました。話したことをまた話したり、こちらが伝えたことを覚えておらず、同じことを聞き返したりするようになりました。料理の仕方もわからなくなり、味噌汁を作ることもできなくなってしまいました。料理ができなくなったことで、食事をとるのが不規則となり、一時期だいぶ痩せてしまったそうです。
刺激の少ない単身生活が原因で、物忘れなどの認知症の症状が出てきたものと考えた妹さんが自分の自宅に連れてきて、しばらく一緒に過ごすことになりました。しかし、何泊か泊まるための荷物の準備ができません。また、妹さんの家に来ても、テレビを見ることもなく、ずっとぼーっとして過ごしていたそうです。何回教えても、玄関の内鍵の開け方がわからず、外に出ることもできません。
これではいけないと、妹さんは長南町の学習会で学んだ認知症予防の知識を活かし、本人のA市の自宅で人と交わる機会を積極的に設けるようにアドバイスしました。毎週火曜日に体操教室に参加するようにして、夕方からは町内会の防犯パトロールに参加するようになりました。近隣の方との交流が活発になり、日常的に会って話をするお友達が増えました。さらに裏庭の植木を減らして畑を作りました。野菜の収穫を楽しみにするようになり、毎週末に息子さんと一緒にホームセンターに出かけ、畑の作物をつくるために色々計画するなど、自発的に行動するようになったそうです。こうした生活の変化が実を結び、認知症の症状は大きく回復しました。今でも物忘れはありますが、単身生活を楽しみ、生き生きと暮らせるようになっているそうです。
このケースのように認知症の症状が出ても、回復のためにできることはたくさんあります。認知症を過度に恐れる必要はないのです。このケースからは、特に人間関係、人とのリアルな場でのコミュニケーションがとても重要なことがわかります。人とリアルな場で関わるとき、私たちの脳はフル回転しているんですね。認知症予防には、運動、人とのコミュニケーション、新しいことに積極的に挑戦することの3つが重要と言われています。いずれも脳を働かせる人間の活動です。
2020年1月から新型コロナウィルス感染症が広まり、感染拡大を防止するために私たちは自主的な隔離生活を送ることを余儀なくされました。人から人に感染する感染症、予防するためには人との接触を減らさなければなりません。地域での集まりがなくなり、長南町でも人と人のリアルなつながりが失われていると感じています。私が住んでいる地域でも、私が引っ越してきた8年前には2ヶ月に1回ほど、集まりがありましたが、ここ2年間はまったくありません。地域の方とは道で出会ったときに挨拶するくらいです。
新型コロナウィルス感染症がある程度落ち着いた今、新たな地域でのつながりについて、もう一度考えてみるチャンスが来ていると感じています。

■上野先生から認知症について学ぶ学習会を開催します。
ぜひご参加ください。
5月から募集します。
詳しくは、広報ちょうなん5月号をご覧ください。

問い合わせ(申込先):福祉課 包括支援センター
【電話】46-2116

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