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長南町認知症サポート医〔上野秀樹先生〕の認知症見立て塾 [第43回]

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千葉県長南町

今回は認知症支援に於ける精神科医療と認知症の人の支援についてお話ししましょう。
私は精神科医なので、もの忘れ外来において精神科医療を提供することがよくあります。もの忘れなどの認知機能障害がある認知症の人に、なぜ精神科医療が必要になるのでしょうか。それは軽度認知障害から認知症の全経過を通じて、約8割の認知症の人に精神症状が合併することがあるという報告もあるくらい、認知症の人に精神症状が合併するのは珍しくないからです。
認知症は、何らかの医学的な原因で、もの忘れや周囲の状況がわからない見当識障害、理解力・判断力の低下などの認知機能障害があるために、日常生活に支援が必要になった状態です。私たちの社会は、五体満足で、ある程度の認知機能がある人向けにできているので、認知機能障害があるとうまく適応ができずに不安やうつ状態、被害的な傾向や興奮状態などのさまざまな精神症状を生じてしまうことがあるのです。参考になるのは、こうした精神症状やそれに伴う行動障害を問題行動として捉えるのではなく、認知症の人が周囲の環境に適応できないことを訴えているSOSのメッセージとして捉える考え方です。
対応でまず必要になるのは、どうしてその認知症の人が精神症状を生じるに至ったのかを理解することです。もともとのその人の人柄が影響しているのかもしれません。過去のさまざまな人生体験が影響している可能性もあります。また、身体的な病気やその治療薬の影響もあるのかもしれません。その人の様々な側面を深く理解することが必要になるのです。こうした理解の上で、その認知症の人が混乱しないような環境、適応できるような環境調整をすることになります。
さらに必要があれば、精神科医療を利用することもできます。精神科医療の中心は精神科薬物療法です。精神科薬物療法は、原因を治療しているわけではなく、とりあえず精神症状をコントロールする治療法です。どんな薬でもそうですが、精神科薬にも期待される効能・効果の他に、さまざまな副作用があります。ある人が精神科薬を利用した時に、どのような効果があって、どんな副作用が出るかは、その人によって違います。最小の副作用で最大の治療効果が上がるように、薬物療法の調整が重要になります。いわゆる薬のさじ加減です。
診察室での診察では、どうしても時間が短いこともあり、その人の状態を完全に把握することはできません。認知症の周囲の人、ご家族や支援者からの情報がとても重要になるのです。その時に認知症の周囲の人の医学的な理解が深いと的確な情報を提供していただけるので、精神科薬物療法の調整がうまくいくようになります。
実は認知症支援で重要になってくるのは、周囲で支えている人が、その認知症の人の医学的状態をどの程度理解しているかなのです。その人がかかっている身体的な病気や内服している薬の効能・効果と副作用、そして、精神科医療が必要なケースであれば、精神症状の理解と精神科薬の効能効果と副作用の理解です。
今年も認知症に関する医学的理解のために参考になる情報を提供していこうと思います。

・関原の明治30年築、今年128歳になる古民家
長南町認知症サポート医がもの忘れ外来を開設しています

◆上野先生を講師に迎えた「認知症学習会」を毎月開催しています。ぜひご参加ください。
日時:2月19日(水)15時〜16時(要事前申込)
場所:保健センター

問い合わせ(申込先):福祉課 包括支援センター
【電話】46-2116

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