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自治体の皆さまへ

【特集】対談 多様なライフスタイルの受け皿に

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千葉県館山市

経営者・猟師・漁師 川邊健太郎氏 × 森正一市長

・川邊 健太郎 Kentaro Kawabe
Yahoo!JAPANやLINE、PayPayなどをグループ会社に持つZホールディングスの代表取締役会長

・森 正一 Shoichi Mori
館山市長

今回、Zホールディングス・代表取締役会長の川邊健太郎氏(市内在住)に、「館山のポテンシャルや経営者目線から見た行政運営」についてお話を伺いました。(聞き手…館山市行財政改革委員会委員長、構想日本 総括ディレクター・伊藤伸氏)

・移住先に館山を選んだきっかけを教えてください。
川邊:釣りや海で遊ぶのが好きで、学生時代から南房総地域にはよく訪れていて、親しみがありました。
2012年にヤフー株式会社の副社長に就任した時期から、仕事も頑張り、オフの時はゆったりとした生活を送りたいと考え始め、内房の海を自分の足で歩いて見て回った中で、今の家から見える海がとても綺麗で、別荘を購入しました。私にとって、海や人が魅力的で、それがたまたま館山市だったんです。
最初は別荘として使用していましたが、2013年に引越し、住居として生活しています。ありがたいことに、今はQOL(クオリティオブライフ…生命や生活の質の意)が非常に高い日々を過ごしています。
市長:世界的な大企業の経営者と猟師、漁師の3足のわらじを実現している川邊さんには尊敬しかありません。館山で、多様なライフスタイルが送れることをもっと広めていきたいですね。

・社員のリモートワークやテレワークなどの取組を一歩二歩先に舵を切った理由は何でしょうか。
川邊:第一に「自分が最もパフォーマンスが上がる働き方」を考えたとき、大好きな海の近くでいつでもリフレッシュできる環境に身を置きたかった。社員一人ひとりが最もパフォーマンスが上がる場所で働くことで、生産性も上がるということで、「どこでもオフィス」という仕組みをまずは月1回導入しました。私自身も、館山に住み始めた当時は75分から90分ほどで職場に着くので、通っていました。
市長:館山は古くから別荘地であったり、コロナ禍前は二拠点居住などを行う移住者も増えていました。また、企業誘致など、市内の雇用創出を図っていましたが、まさか館山に居ながらにして都内や遠隔地で働ける時代が来るとは予想できませんでした。
川邊:その仕組みを徐々に回数を増やしている中で、東京都から2020東京五輪の大会期間中に社員の通勤を減らしてほしいと要請されたことをきっかけに、本格的にリモートワークに切り替えてみようかと議論になりましたが、当時は対面を無くすのはやはり無理だろうと感じていました。期せずして2020年2月からコロナ禍が訪れ、リモートワークの改革が10年は早まったでしょう。対面の打合せはこれからも必要ですが、定期報告会のようなミーティングなどはリモートでやっていくつもりです。
市長:ファミリーオ館山など、市内にテレワークに適した施設が増えてきています。自然が近くて気持ちよく働ける環境を整えることで、選んでもらえる、若者が戻りたいと思える街にしていきたいです。
川邊:朝や夕方に大好きな釣りをしたり、“間の時間”に働くと、人生全体の充実度が全然違うと実感しています。館山でこうした先進的な取組が活発になってほしいですね。

・館山の財政事情は、他自治体に比べて行革努力をしているものの、極めて厳しい状況にあります。経営者の視点で何をしなければならないと思いますか。
川邊:経営の基本は「入りを増やして出を減らす」ですが、優先度をはっきりさせないと闇雲にお金が使われてしまいます。住民の意見を聞きつつ、「ここはやる」「ここはやらない」といった優先順位を付けることが非常に重要です。戦略的に10年後、20年後の未来を見据えて計画することが経営そのもので、市長の手腕に期待しています。
市長:市長に就任して令和5年度予算を組もうとした際、歳入の見込みに対して予算要求額がはるかに多かったことに非常に驚きました。これまで市議として市の予算をチェックしてきた視線と、市民の皆様からの声、職員の意見を参考に総合的に判断していきます。
・「改革イコール削減」という印象を持たれがちですが、削減するだけでなく前向きな将来像を出していく必要があるということですね。

『価値観の変化を察知した場所が選ばれる』
・川邊さんが館山に期待することや課題を教えてください。
川邊:絶対的に“地の利”を活かすべきです。車で東京から90分で来れて、全然違う雰囲気が味わえる街なのに、ドライブで来た先に何もないのではお客さんは来ません。
これから社会が激変する要因として「リモートワーク」「副業」「都市化と過疎化」の3つが挙げられます。特に「リモートワーク」と「副業」については、日本の常識が20年前倒しになったようなコロナ禍以降の新しい価値観です。急速な変化のため、多くの人がその変化に気づいておらず、行政はなおさら気づいていないのではないでしょうか。「都市化と過疎化」は従来からの問題でしたが、今後も間違いなく進みます。都心がもの凄く都市化する中で人口の飽和が起きます。その時、館山が「都心から少し離れているけれど、リモートワークや副業といった視点から見たらとても過ごしやすい環境」に整備されていたら自然と人が増えるのではないでしょうか。
新しい価値観について敏感に察知している企業は、事業をしやすい環境づくりを行政に期待しています。行政だけでまちづくりに取り組むのではなく、価値観がガラッと変わった今だからこそ、それを先取りしたところが次に発展していけると思います。
市長:2019年の台風被害からコロナ禍と、市民の皆様には本当に我慢していただきました。ピンチをチャンスに変えるために、この数年は非常に大事だと感じています。民間の方々と協力してお互いに発展できるよう邁進していきます。

◆川邊氏も参加予定! 市民と一緒に考える館山市のこれから 事業仕分け開催
事業仕分けは「公開の場で、外部の視点を活用して、個々の事業を精査する作業」のことです。
期日:9/23(土・祝)・24(日) 2日間

問合せ:行革財政課
【電話】22-3235

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