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小さなやさしさ

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和歌山県上富田町

■レイチェル・ツイ(ALT)
私はカナダからきました。
自転車に乗ったことがなかった私は、念のため自宅で少し練習し、バランスが取れたのでもう多分十分だと思っていた。しかし、上富田町に来て1週間後に自転車で転んだ、いいや、まくれっ飛んでしまった。
去年の5月に大学を卒業し、8月に日本に着いた。外国に住み、一人暮らしの生活、仕事、すべてが初めてだ。都会に生まれ育った私は、ネットでも何も情報がない上富田町で生きられるだろうか、不安だらけだった。まさか1週間で怪我をしてしまうとは。
学校の初日は包帯で包んで行った。子ども達がすぐ声を掛けてきた。みんなが丸い目で「いたそうー」と声をそろえた。
それからは「自転車は慣れてきましたか?」、「先生ヘルメットは?」出会う児童たちは気遣いに満ちている声で呼びかけてくれた。彼らを見ると、この町の温かさを感じる。転んだ時にすぐ手伝ってくれた人たちも思い出した。
上富田町でたくさん新しい経験ができ、自分が本当に成長したと感じた。この1年間に様々な人に会えて、様々な生き方や考え方に触れてきた。卒業したばかりの私が、これからの人生はどうなるのかいつも心配していたが、ここに来てから世界が広がり、選べる道も広がった気がする。
もちろん、自転車も前よりうまく乗れている。涼しい日に自転車で富田川に沿って走るのが好きになった。都会でめったに見られない夜空の星もとてもきれいだ。
仕事に対し、最初は不安だった。それでも、子ども達が素直に受け入れてくれ、毎日面白く楽しい授業ができている。振り返ってみると、子ども達の小さなやさしさに何回も救われてきた。
1年が経ったが自転車で転んだ時の傷はまだ残っている。その傷跡とともに、周りの人のやさしさも残っている。色々あったが、上富田町で本当によかったと思う。

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