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わたしのまちの文化財 vol.196 神田古墳群~三船神社の神域に眠る古墳群~

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和歌山県紀の川市

1月17日(水)から「紀の川市の古墳」と題し、紀の川市歴史民俗資料館で企画展を行います。
市内の古墳と言われると貴志川地域を思い浮かべるかもしれませんが、既に消滅した古墳やひっそりと山奥に築かれた古墳など、実は身近に古墳が存在しています。その中の一つとして神田古墳群を紹介します。桃山町神田に所在する三船神社は、地元の人たちから「三船さん」と呼ばれるように、とても親しまれた存在です。1590年代に再興された社殿は、華麗な桃山時代の形式を示す建物として国の重要文化財に指定されています。しかし、この神社の神域に古墳があることは、あまり知られていません。
神田古墳群は、社殿背後の丘陵に所在している古墳群で、神社の関係者や考古学研究者、地元でも一部の人たちには知られた存在でした。昭和56年には和歌山大学考古学研究会により神田1号墳の墳丘測量調査や周辺の調査が行われ、合計5基の古墳が確認されましたが、1号墳以外は既に大きく荒らされた状態でした。
1号墳は、三船神社の北東側丘陵に位置しており、調査の結果、直径約11mの円墳で、高さは南側で約3mであることが分かりました。埋葬施設は横穴式石室で、死者を葬る玄室の長さは約2.7m、幅約2.0mと小型です。既に盗掘されており副葬品が見つかっていないため造られた詳細な年代は不明ですが、石室の構造から古墳時代後期のものとされています。
紀の川中・下流域に存在する横穴式石室をもつ古墳の多くは、特別史跡岩橋千塚古墳群に代表されるように、地元で産出される緑泥片岩を主な石材とし、いわゆる「岩橋型」と呼ばれる横穴式石室の特徴を持っています。その特徴は、石室内に石梁や石棚といった構造物をもつことで、一つの目的として石室が頑丈にすることがあります。貴志川町の北1号墳や高尾山1号墳は、このような特徴を持っています。それに対し、神田1号墳の石材は蛇紋岩の自然石を主体とし、一部に緑泥片岩を使用しており、このような特徴を持つ石室は、和歌山市に所在する寺山古墳群などがあります。
現代の感覚では比較的近い場所にある古墳でも、石室の形式に違いが見られ、それぞれの関係性をくわしく見てみると、当時の社会情勢が見えてくる可能性があります。文字に残されていない歴史を紐解く鍵は、案外身近にあるのかもしれません。

問合せ:紀の川市文化財保護審議会
【電話】77-2511(生涯学習課内)

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