運転手不足や利用者の減少などの影響で、バスをはじめとする地域公共交通は厳しい状況にあります。
今回の特集では、これからも持続可能な地域公共交通を目指し、市が新たに導入予定のデマンド乗合交通について紹介します。
・河北西エリアR7.1.8~予定
・河北東エリアR7.1.8~予定
・河南西エリアR8.1~予定
・河南東エリアR8.1~予定
▽デマンド乗合交通とは?
利用者の事前予約に応じて運行する公共交通システムで、路線バスやタクシーの中間的な位置にある乗合の交通手段です。固定のダイヤや運行ルートを定めていないので、自分が好きな時に区域内に設定された地点へ行くことができます。
全国各地の自治体で深刻化する公共交通離れ。利用客の少ない路線が廃止されるなど、公共交通を取り巻く現状は厳しさを増す一方です。本市も例外ではなく、現在運行している定時定路線のコミュニティバス「地域巡回バス」も利用者が減少しています。
令和4年度に実施したアンケートでは、「運行便数の少なさ」や「バス停までの距離が遠い」などの利便性の課題が浮上。課題の改善に向けて、紀の川市地域公共交通活性化再生協議会で、関係団体の関係者と協議を重ね、令和7年1月から新たな交通手段として、AIを活用したデマンド型区域運行サービスの導入を決定しました。
運行本数の少なさ、目的地への所要時間、バス停までの距離などの利便性の課題改善や地域公共交通に対する満足度向上と利用者の増加を目指し、まず、河北西・河北東エリアで運行を開始します。地域生活への影響を考慮し、運行開始後しばらくの間は、既存の地域巡回バスなどを維持。評価を行いながら、地域の移動手段の在り方を検討します。
デマンド乗合交通と鉄道・バスなどとの組み合わせにより、相互に利用しやすい公共交通ネットワークを形成します。
■有識者インタビュー デマンド乗合交通は人口減少社会における交通の在り方
紀の川市地域公共交通活性化再生協議会
副会長
近畿大学生物理工学部
人間環境デザイン工学科
山田崇史 准教授
▽新たな地域の発見
地域公共交通活性化再生協議会では、地域の実情に即した輸送サービスの実現に向けて議論を重ねてきました。その中で課題や状況の変化として浮き彫りとなってきたのは、公共交通の利用者の減少です。少子高齢化や都市への一極集中といった社会問題の影響を受けている部分が大きいと思います。今回、導入予定である「デマンド乗合交通」は、そういった社会問題に対応していくための一つの手段であり、人口減少社会における交通の在り方を示しています。
デマンド乗合交通とこれまでの地域巡回バスとの違いとしては大きく三点あります。一点目は、固定のダイヤや運行ルートを設定せず、予約に応じて乗降ポイント間を柔軟に運行すること。二点目は、同じ時間帯で同じ方向に移動する予約があれば、少し回り道をして複数人が乗り合う形で運行すること。三点目は、新たに多数の乗降ポイント(停留所)が設定され、河北エリアでは現在の約3倍となる331ポイントから乗降可能になることです。乗降ポイントが大幅に増加することで、これまで訪れることが少なかった地域にも気軽に行くことができます。ぜひこの機会に新たな地域の魅力を発見してほしいです。
▽持続可能な公共交通
人は緊急時には、日常生活で行っている行動しかできないと言われています。今回のデマンド乗合交通についても、家庭や仕事の事情で急に利用しようとした際に、戸惑ってしまうことがあるかもしれません。日頃から、いざという時の移動手段を確保しておくことが重要なので、デマンド乗合交通を一つの手段として日常生活に取り入れてほしいです。
利用する人があっての公共交通であり、存続させるためには市民のみなさんの協力が必要不可欠です。自治体だけでの取り組みでは、持続可能な公共交通ネットワークの維持は困難になることが予測されます。この機会に、デマンド乗合交通を体験してもらい、利便性を実感してもらうことで、今後の定期利用に繋げてもらいたいです。
地域一丸となり持続可能な公共交通を目指すには、多くの人が日常生活の移動手段に公共交通を取り入れることが大切です。若い人たちにも積極的に利用してもらいたいですね。
▽今後のスケジュール
河北エリアでデマンド運行開始:令和7年1月8日~
河南エリアでデマンド運行開始:令和8年1月(予定)
↓
利用状況を確認し、効果検証を実施
地域巡回バスの見直しを実施
地域巡回バスとデマンド乗合交通のサービスが重なるエリアについて、役割分担を明確にする形で地域巡回バスの整理・見直しを実施する予定です。
令和9年4月(予定)
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