にしいさかじょうるりおんどぼんおどり
西井阪地区では、お盆の時期、地元にある蓮乗寺で「西井阪浄瑠璃音頭盆踊」が行われています。盆踊りの由来は不明ですが、文久3年(1863)と染め抜かれたやぐら幕の周りで盆踊りを踊っている写真が残っており、江戸時代末期には踊られていた可能性があります。戦後も長らく盛大に行われていましたが、人々のライフスタイルの多様化などで徐々に下火になっていた時代があります。
そんな中、当時老人会会長であった故中尾肇氏は、文学的にも名高い浄瑠璃本を用いた盆踊りがこのままでは無くなってしまうと危機感を感じ、何とか継承したいと昭和54年に盆踊りを復興させました。しかしその後、再び音頭を取る人や踊りに参加する人は減少し、伝統ある盆踊りは一時期途絶えてしまいます。
再び盆踊りが復興されたのは、それから30年後の平成24年のこと。30年の年月で浄瑠璃音頭を踊れる人は、若い時に婦人会で活躍していた女性たちで70歳を超えていました。また、浄瑠璃の台本を読む人もいなくなり、市の文化財保護委員であった大井一成氏に「傾城阿波(けいせいあわ)の鳴門(なると)、十郎兵衛宅(じゅうろべえたく)の段(だん)」他の台本を現在の自分達にも読めるように翻訳していただきました。音頭取りがいないので、民謡を習っていた人にお願いし、浄瑠璃音頭を練習してもらいました。多くのみなさんの協力で盆踊りを開催することができたのです。
西井阪浄瑠璃音頭盆踊の形式は、寺の境内の真ん中に作ったやぐらを取り巻くように踊りながら回る輪踊りです。やぐらの上で音頭取りが語る音頭の文句は、ほとんど浄瑠璃の台本をそのまま取り入れ、それを独特な節回しで語っています。音頭取りが語る節に合わせて踊り手が「あぁ、どっこい」や「さぁよぉいや、あさよぉいやせぇ」と囃子(はやし)を入れながら踊ります。
30年ぶりの浄瑠璃音頭盆踊はとても懐かしい響きでしたが、当初は踊りを知る人が少なく、踊りも輪にならず少し寂しい思いをしました。しかし、子ども会や新しい住民と地元住民が一つになって大きな輪になり、今では昔の盆踊りのにぎやかな雰囲気を取り戻しつつあります。始めは子どもがアニメの曲などを踊り、後半は大人も加わり西井阪浄瑠璃音頭や炭坑節を踊っています。新型コロナウイルスの影響で2~3年中止しましたが、昨年から再開し、今年も開催予定です。先人達が守った伝統ある盆踊りを、これからも老若男女が楽しく踊りながら次の世代に引き継いでいきたいと思っています。
問合せ:紀の川市文化財保護審議会
【電話】77-2511(生涯学習課内)
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