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自治体の皆さまへ

世界遺産を読み歩く ー学芸員通信(全12回)ー 第12回

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和歌山県那智勝浦町

■第12回(最終回) 地域遺産について
早いもので、今年も最後の月になりました。町民の皆さまには、1年間お付き合いいただきありがとうございました。最終号となる今回はここまでの連載を振り返りつつ、地域遺産について考えてみたいと思います。
この連載は、2024年7月に「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産登録20周年を迎えることを記念して企画しました。そのため、世界遺産とはなにかから始まり、それは人類共通の財産であり、顕著な普遍的価値をもつものであると紹介しました。
そして、そこから「紀伊山地の霊場と参詣道」に焦点をあて、それぞれの聖地や構成文化財の特徴についてお話しました。これらの文化財について、少しでも記憶に残ることがありましたら幸いです。
ただ、この連載を通じて紹介した文化財については、ほとんどが『指定文化財』と呼ばれるものです。国や地方公共団体によって、その価値が認められたものばかりで文化保護法などの法律によって保護を受けています。
では、そのほかの未指定文化財には価値がないのかと問われると、もちろんそうではありません。未指定文化財のなかには事情があり指定を受けていないものもあります。また、世界遺産では人類共通の、国宝などでは国全体の財産として登録されるため、その条件を満たさない地域のなかにある文化財については未指定のまま放置され、価値がないというふうな誤解をうけがちです。
しかし、先ほども述べたとおり、未指定であってもその地域にあることに意味があります。
例えば、建築物や燈籠などの石像物はどの地域にも存在しますが、地域ごとの特徴がみられる部分でもあります。そして、その特徴は風土や気候、生業を読み解くための重要な要素となります。そうやって見つけた地域の特徴を、他地域のものと比較してみることで、それはこの地域だけにある『特別ななにか』にもなる可能性があります。
この話だけでは難しく感じますが、寺社建築であれば屋根の形や彫刻を観察してください。彫刻にはいろんな動物がいたり、同じ動物でもかわいらしいものや凛々しいものがあったりします。いろんな場所にいったときに、どこか一部分を必ずみるようにすると、似ているけど違うものに気づくことがあると思います。それは地域の魅力発見のきっかけになるかもしれません。
最終号については世界遺産から離れたお話になりましたが、お付き合いいただきありがとうございました。また、いつか機会がありましたらよろしくお願いいたします。

文・前田 愛佳(学芸員)

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