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昔から今も残る 高野町内の名所シリーズ(85)

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和歌山県高野町

◆金剛峯寺奥院経蔵(こんごうぶじおくのいんきょうぞう)(高野山)

奥之院の苔むした大名墓に見守られながら進んだ先、灯籠堂のさらなる奥に、弘法大師の御廟があります。多くの参詣者が時を忘れて弘法大師に向き合います。その右脇にある檜皮葺(ひわだぶき)の建物が、奥院経蔵(おくのいんきょうぞう)(重要文化財)です。

木食応其(もくじきおうご)の勧めにより石田三成が、紀州での戦乱が落ち着いた慶長4年(1599)に、実母の菩提を弔うために建立されました。

経蔵は、その名が示すとおり高麗版一切経(重要文化財)を納めるために建てられ、正方形平面の内部中央には八角形平面の輪蔵(りんぞう)と呼ばれる棚が設けられています。その輪蔵の柱上には精緻な組物が載せられ、扇状に広がる軒を支持しています。

足元には円形の縁も施され、一棟の建物のように造られています。特筆すべきは、蔵の中心に配された心柱から輪蔵全体が吊り込まれるような構造であることです。心柱を軸に輪蔵全体が回転するのです。これは経典を納めた棚を回転させることで、読経することと同じ功徳を積む、といった考えに基づいたものです。チベット仏教のマニ車などの慣習と共通する伝統的な文化です。外観は白木で簡素なたたずまいでありますが、建物内部は極彩色で彩られ、輪蔵の組物廻りには精緻な彫刻も施されています。

令和4年度に完了した修理事業において、塗装の剥落止め、埃や黴を除去したことで、桃山時代の鮮やかな色彩や切金の輝きが、絢爛たる風格をもってよみがえりました。建物の内壁には羅漢図が描かれ、制作時の下書きの線や配色の注記なども確認することができました。この緻密な修復作業は、まさに現代の画工が400年以上昔の塗師と心を通じ合わせる、静謐な時の流れそのもののようでした。

大名墓総合調査委員会/教育委員会

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