◆観音堂(かんのんどう)(花坂)
花坂の鳴川明神社の隣に観音堂があります。観音堂は桁行(けたゆき)一間、梁間(はりま)三間、入母屋(いりもや)造り、向拝(こうはい)一間の銅板葺きのお堂です。現在のお堂は明治時代に建立されています。江戸時代の地誌『紀伊続風土記(きいしょくふどき)』によると鳴川明神社の北に「無量寺」があることが記され、『紀伊国名所図会』の挿図には「観音」というお堂や「むどう寺」というお堂が描かれ、現在の観音堂につながるお堂があったようです。観音堂の本尊は十一面観音立像で、左手に華瓶(けびょう)を持たれています。
観音堂の脇壇には阿弥陀如来坐像も安置されています。平成27年(2015)に複製が作成され、もともとの仏様は現在和歌山県立博物館で保管されています。大河内智之氏の調査によると阿弥陀如来坐像は「全体を厚い修補の層が覆い像容を捉えがたいが、側面観では奥行きが深く、背筋が伸びた緊張感ある体型を確認でき、11世紀初めごろの造像」と観察されています。花坂に残る最古の資料であり、本尊十一面観音立像も阿弥陀如来坐像も花坂の地域史を考える上で貴重なものです。
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