◆日本仏教の聖地「金剛峯寺」のお坊さんのおはなし
~仏教行事・密教行法に関わりのある植物~
▽櫨(はぜ)、黄櫨(はぜのき)(ウルシ科)花ことば「真心」「賢明」
前回からウルシ科の植物、櫨について紹介させていただきましたが、今回は仏教行事において、どのような役割があるのか紹介してまいります。
高野山では年末に伽藍の御社で「御幣納(ごへいおさめ)」という行事があります。御幣納めに使う御幣は長さ約1メートル、直径最大約3センチの櫨・ヌルデなどのヤマウルシの外皮を除いて乾燥させ、先端を割ったところへ紙を挟んで作ります。この御幣納めは、行く年の無事の感謝と来る年の除災招福を祈る行事で、龍光院でお勤めをしてから僧侶が御幣を担ぎ、たいまつを持った役人を先導に伽藍の御みやしろ社まで担いで行きます。御社の門前で伽藍の僧侶へ手渡された御幣は、一之宮の外縁に納められます。毎年多くの参拝者が除夜の鐘とともにこの光景をひと目見ようと訪れています。
そして新年を迎えますと、今度は「修正会(しゅしょうえ)※」といって年の初めに1年間の息災を祈るための法会が厳修(ごんしゅ)されます。この時に櫨などのヤマウルシの木の皮を剥いた1メートルほどの牛王杖(ごおうづえ)(福杖(ふくづえ))を法会に出仕した僧侶たちが持ち、読経しながら堂内を駆け回り、偈文(げもん)を唱えて床を打って厄難を払うという一風変わった法会が行われています。
※修正会…伽藍金堂1月1日から3日間、大塔1月5日のみ(全日程午前9時から)
高野山の年末年始の大切な行事を飾る木であり、また今後紹介する護摩修行においても重要な役割を果たす植物の櫨。意外にも多くの場面で活躍していることがお分かりいただけたでしょうか。つづく
問合せ:高野山真言宗総本山 金剛峯寺
【電話】0736-56-2012
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