◆日本仏教の聖地「金剛峯寺」のお坊さんのおはなし
~仏教行事・密教行法に関わりのある植物~
▽櫨(はぜ)、黄櫨(はぜのき)(ウルシ科) 花ことば「真心」「賢明」
今回は「櫨(はぜ)」が密教の修行法においてどのような役割があるのか紹介してまいります。
密教の代表的な修行法のひとつ「護摩(ごま)」では、護摩壇と言われる壇の上に炉を据え、そこに木を組んで火を焚き、供物をくべて供養をする作法があります。そのときに使う供物を支具(しぐ)といい、その中で段木(だんもく)と乳木(にゅうもく)という護摩木に櫨を用います(櫨以外もある)。この櫨の木は燃えるとパチッパチッと小気味の良い破裂音を出して爆(は)ぜるので、炎や煙と相まって荘厳な雰囲気になります。余談ですが、火が立たず燻(くすぶ)ると煙が蔓延し眼や喉に染みて苦しくなります。また、ご存じのとおりウルシ科の木なので護摩を修すると手や肌が荒れることがあります。現在、櫨を採りに山に入る人が減り、入手が困難になってきているため、杉など他の木で代用する場合が増えてきています。
元来この作法は、インドのバラモン教で供物を焚いて出た煙と共に術者の願いを天上に居る神々へと届けてその成就を祈ることが起源になっています。仏教では始めこれを否定していましたが、後々に成仏のための方便として仏道の護摩が修行されるようになり今日も続いています。
このように、日々の供養においても重要な支具として用いられる櫨ですが、奥之院や伽藍、山内寺院で行ぜられている護摩にお参りの際、ご覧になってみてはいかがでしょうか。 つづく
問合せ:高野山真言宗 総本山 金剛峯寺
【電話】0736-56-2012
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