『詩の活動とは、命を探っていく旅』
長野県長野市出身、詩人。第31回萩原朔太郎賞、第58回H氏賞、第45回高見順賞など多数の文学賞を受賞。
杉本 真維子(すぎもと まいこ)さん
詩集「皆神山(みなかみやま)」で第31回萩原朔太郎賞を受賞した杉本真維子さん。影響を受けた詩人の一人が、晩年ふじみ野市に住んでいた石原吉郎(いしはらよしろう)で、自らもふじみ野市に移り住んだことで縁を感じていると笑顔で話してくれました。
「皆神山」は、長野県に実在する山ですが、実は杉本さん自身はそれほど馴染みのある場所ではないそうです。長野の家を離れたことから「故郷をつかまえに行く」という気持ちが芽生え、そこからふと心に降りてきたタイトルとのことでした。また、皆が神という意味としてもとらえているそうで、そこには属性、職業、男女、人間か動物かなどで命を分類するのではないという解釈が込められているそうです。
詩を始めたきっかけには、8歳の時に亡くなった祖父の存在があるといいます。人には命があり、その命がいつかなくなると知り、毎日泣いていた時期があったそうで、戦地帰りの無口な祖父の発した言葉を一文字も漏らさず残せば死なないのではないかと思い、ノートやチラシなどの裏に言葉を書き留め始めたとのことです。「読むことよりも先に書くことを始めたものですから、子どもだった私は『これは何なんだろう?』とひたすら暗中模索の日々でした。のちに『これは詩なんだ』と追いかける形で書き続けて詩につながっていったのだと思います」と振り返って話してくれました。
杉本さんにとって詩とは、命そのものを見つめ、言葉で書くことで命を残すことだといいます。詩を書いてきてよかったと思うのは、死者が身近に感じられ、消えてなくならないと信じられることだそうです。
「私にとって、詩の活動とは、命あるものが死なないようにするための方法を探求していく旅なのではないかと思います」と、詩への思いを熱く語っていただきました。
杉本さんの詩集は市立図書館でもお読みいただけます。今月は、杉本さんの巡回展やワークショップなどを開催します。詳しくは、30ページをご覧ください。
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