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特集 令和6年度三芳町施政方針(1)

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埼玉県三芳町

■子どもたちへつなぐ麗しき「まほろば」、三芳町
三芳町長 林伊佐雄

大和は 国のまほろば 畳(たた)なづく青垣 山籠れる大和しうるわし
(訳:大和は国のなかでももっともよいところだ。幾重にも重なりあった青い垣根のような山々、その山々に囲まれた大和は本当に美しい場所です。(『古事記』中巻))倭建命が、詠んだ大和を思う望郷の歌です。この歌と出会った時、大和と武蔵野地域の光景が重なりました。平地林と畑が重なりあう、うるわしき「まほろば」です。
少年時代、武蔵野の平地林を愛し、一人でよく歩きました。鬱蒼とした屋敷林から畑に出ると、見渡す限りの大地と大空が広がり、一本の長い野道がどこまでも続く。農家は、朝早くから日が暮れるまで働いていました。平地林で父母が掃いたクズ(落ち葉)をかごの中で踏みしめる。カサカサと落ち葉の音が広がり、家族の愛に満ちあふれていました。
昨年の7月5日に、当地域の「武蔵野の落ち葉堆肥農法」は世界農業遺産に認定されました。認定地域の中で、大都市近郊では世界で唯一であり、FAO※の李先生に奇跡と言わしめた所以です。
しかし、ここ数十年の都市化の波によって、360年以上継承されてきた武蔵野の姿が大きく変わってきています。環境学者ヨハン・ロックストローム氏らが提唱する「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」が大都市近郊故にどこよりも早く迫りつつあり、私たちが地球上で安全に生存できる限界を超えようとしているのを日々実感しています。
かつての武蔵野の「まほろば」は変容しつつありますが、伝統的農法を懸命に継承している農家や市民サポーターの姿に、落ち葉を集める輝く子ども達の瞳に、そして、未だ残る里山の自然景観に「まほろば」の心は光り輝き生き続けています。それを未来の子ども達に継承するのが、私たちの「使命」であり「祈り」です。
奇跡は長くは続かない。「プラネタリー・バウンダリー」が迫る中で、日々失われていくものがあります。
強い意志と覚悟とビジョンをもって力を合わせて、奇跡を確固不動なものに「まほろば」を未来の子ども達に継承していかなくてはいけません。
※FAO…国際連合食糧農業機関

■町政運営方針 3つのポイント
今年度の町の指針を3つのポイントにまとめました。
~未来へ進め、三芳町!2024~

◆01 ウェルビーイング幸せの実現に向けて
○百折不撓の心で、残された時間はない
少子高齢化や人口減少が進む中で、持続的な幸せである「ウェルビーイング」(well-being)の実現に向けた取り組みが広がりをみせています。
令和6年度から始まる「第6次総合計画」でも、町の将来像を「共に創ろう ひと・まち・みどりがつながる幸せ(ウェルビーイング)のまち」としました。一方で、私たちが地球で安全に生存できる限界(プラネタリー・バウンダリー)が迫ってきています。残された時間は多くはありません。誰一人取り残さない「幸せ」の実現のためには、私たち人類が潜在的に持っている、どんな困難にも屈しない「百折不撓」のDNAを信じて歩んでいかなければなりません。

○TOPICS プラネタリー・バウンダリー
「地球の限界とは?」
プラネタリー・バウンダリーとはスウェーデンの環境学者ヨハン・ロックストローム氏などが提唱する考え方。地球環境について9項目の限界点を定め、それを越えた場合、地球環境に取り返しのつかない変化が起きる可能性があるとされています。

◆02 協働・共創・共生は出逢いの積み重ね
○小さな出逢いが未来を拓く
三芳町では、住民の皆さんと町が対等の「パートナー」としてまちづくりを進めてきました。すべての人が生き生きと暮らすことができる共生社会を実現するために『共創』という協力・連携が必要であり『共生』と『共創』が一つになって「幸せ」のまちづくりが実現できるとも言えます。今年度は「あいサポート運動推進に関する連携協定」締結10周年、来年度は「手話言語条例」制定10周年、さらに東京2025デフリンピックが開催されることから、この節目を共生社会推進の機会としなければいけないと考えています。協働・共創・共生は、小さな出逢いから始まり、その積み重ねが未来を拓きます。

○TOPICS 2025年に東京で開催
「デフリンピックとは?」
デフ(Deaf)は「耳が聞こえない」という意味。デフリンピックは、ろう者のためのオリンピックで、2025年には夏季大会が日本で初めて開催されます。三芳町はホストタウンとして、マレーシア選手団の事前キャンプの受け入れ準備を行います。

◆03 誰もが幸せに生きる夢の実現に向けて
○Child Friendly Cities Initiativeの推進
夢は未来への人生の道標であり、生きる希望であり、生きる意味であり、人生を幸せにする原動力です。ユニセフ(UNICEF)は「みんなが幸せになれるまち」をつくるために、「子どもにやさしいまちづくり事業(Child Friendly Cities Initiative)」を推進しています。その特徴は、人々がみんなで“まち”をつくっていくことと、子どもをまちづくり当事者として位置付けることです。教育研究家リヒテルズ直子氏は「子どもが幸せに生きられる社会は、大人たちも幸せに生きられる社会」であると指摘しています。子ども達の声に耳を傾け「子どもにやさしいまちづくり」を推進し、誰しもが幸せに生きられる社会を創っていきます。

○TOPICS みんなにやさしい町をめざす
「CFCIとは?-」
ユニセフが推進する「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」とは、市町村単位で「子どもの権利条約」に記された権利を実現させるための活動です。子どもをまちづくりの主体に位置づけ、みんなにやさしい町をめざします。

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