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【市民のひろば】地域密着、身近な話題を体験取材!まちかど特派員だより

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埼玉県上尾市

■大山灯籠と麦畑、そして摘田
◇大石地区 井上 肇(いのうえ はじめ)さん
ことしの出梅(しゅつばい)は?集中豪雨の災害がないことを祈りながらも、夕立を心待ちにする日々がやって来ます。
7月の終わりごろ、見慣れた日常の景色に、木製の灯籠が加わります。大山灯籠です。上尾一帯では、神奈川県伊勢原市の大山[別名「雨降山(あぶりさん)」]にある阿夫利神社の夏山開きにちなむ、雨乞い行事が行われてきました。現在は19カ所になっていますが、古くは45カ所に立てられたことが分かっています。関東一円に広がったさまざまな形の大山信仰の中でも、このように多くの大山灯籠が立てられていたことは「上尾らしさ」の一つでしょう。
今なお続く大山灯籠行事は、雨水に頼るしかない自然環境の中、麦やサツマイモの畑作を主軸に、摘田(つみた)稲作を組み合わせた暮らしが育んだ「らしさ」とも言えると思います。
「大山に日のあるうちは畑打て(大峯あきら)」の秀句に浮かび上がる光景は、上尾市全域の暮らしの原風景そのものかも知れません。
近ごろ農地の減少が著しい浅間台の大山灯籠行事にも「らしさ」がありました。大山祭[石尊(せきそん)さま]として氷川神社の年中行事に組み込まれています。期間も7月26日(灯籠始め)〜8月17日(灯籠納め)と定め、新たな地域コミュニティをつくろうという意気込みを感じました。
50年前の夏、私の感じた初めての上尾らしさを思い出しました。上尾駅に漂う甘酸っぱい芳香です。西口に隣接した食品工場では、上尾特産のサツマイモを原料にブドウ糖や飴(あめ)などを作っていたようです。農業、工業、鉄道輸送がつながり発展していた時代のことでした。
上尾らしさの文化を探しながら、夕まずめに映える大山灯籠の暮らしの明かり、上尾駅に漂うあの懐かしい芳香が展示される博物館、資料館が建ち上がる日を願ってやみません。

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