開催100周年[日本初開催]東京2025デフリンピック
日時:11月15日~26日
場所:東京都、静岡県(自転車競技)、福島県(サッカー競技)
種目:21競技(陸上、水泳、卓球、サッカーなど)
11月15日から26日にかけて開催される、国際的なろう者のためのオリンピックである「東京2025デフリンピック」。
今回の新春対談は、大会の運営に携わる運営委員会役員と大会への出場が期待されるアスリートをお招きし、日本初開催となるデフリンピックへの想いや取り組み、聴覚障がいの当事者としての実体験から、大会を契機とした共生社会の実現に向けた展望などについてお話しいただきました。
・久松 三二(みつじ)氏
デフリンピック運営委員会 委員長
母体となる(一財)全日本ろうあ連盟では常任理事・事務局長を務める
・吉瀬(きせ) 千咲氏
埼玉県プラチナアスリート(強化指定選手)
日本デフ水泳協会女子50メートル自由形
日本記録保持者
・星野 光弘 市長
本市を含め647市区長(令和6年11月現在)が加盟する「全国手話言語市区長会」では会長などを経て現在は事務局長を務める
・倉野 直紀氏
デフリンピック運営委員会 事務局長
母体となる(一財)全日本ろうあ連盟では事務局次長を務める
■デフリンピック100周年に初開催地の日本の歴史が〝変わる〟
市長:新年明けましておめでとうございます。今年はいよいよ東京2025デフリンピックが開催されます。久松さんは、デフリンピック運営委員会の委員長を務められていますが、デフリンピックが日本で開催されることについて、期待されていることや今後の展望などをお聞かせください。
久松:デフリンピック100周年の記念の年に日本で開催できることをとてもうれしく思います。
近年、ろう者などを取り巻く環境は、少しずつ良い方向へ変わってきていると感じていますが、大会の運営にあたり情報アクセシビリティやコミュニケーションのバリアなどの課題を感じています。
東京2025デフリンピックには、こうした現状を変えていく原動力があると考えています。
そして、社会におけるコミュニケーションのバリアを取り払い、日本の歴史の大きな転機になると期待しています。
市長:倉野さんは、デフリンピック運営委員会の事務局長を務められていますが、大会成功に向けた取り組みなどをお聞かせください。
倉野:まず、東京2025デフリンピックの開催にあたり、デフスポーツの魅力を発信し、多くの皆さんとのつながりを作っていきたいと考えています。
そのために、全国各地で大会啓発イベントを開催しています。ここ富士見市でも昨年10月に開催しました。会場では、デフスポーツやデフアスリートの紹介などデフリンピックのことはもちろん、手話言語や耳がきこえないことへの理解促進も図りました。特に子どもたちが手話言語やデフリンピックを知るきっかけになっていると実感しています。
将来を担う子どもたちに「きこえない」とはどういうことかを理解してもらうことが大切であり、我々が制作した映画『みんなのデフリンピック』を全国の小中学生に見てもらい、さらに、きこえない子どもたちとその家族には、仲間がいることを知ってほしいです。
今後は、全国の小中学校と連携し、子どもたちが「きこえない」とはどういうことかを学ぶ機会を作りたいと考えています。こうした活動を通じて、大会終了後には社会が変わっていく、それがデフリンピックの役割であり、日本開催の意義であると考えています。
市長:吉瀬さんは、ブラジルで行われた「2024世界デフユースゲームズ」で50メートル自由形と100メートル自由形で準優勝に輝くなど日本に限らず世界でも活躍されています。デフリンピックが日本で開催されることについて、アスリートとしての想いなどをお聞かせください。
吉瀬:デフリンピック出場を目指して一生懸命努力しています。私は、耳がきこえないからという理由で、これまでいくつものスイミングスクールから入会を断られてきました。現在は大学の水泳部に所属していますが、大学入学前に所属していたスイミングスクールでは「きこえないことを除けば何でもできる」と理解してくれるコーチや仲間に恵まれ、水泳を続けることができました。これも何度断られても諦めずに水泳ができる環境を探してくれた母のおかげです。練習や合宿への参加を通して、きこえる選手やきこえない選手と多くの時間を共にする中で、コミュニケーションがとれることがとてもうれしいです。
デフリンピックは「私たちはきこえないことを除けば何でもできる」ということを皆さんに理解してもらえるいい機会だと期待しています。
■共に生きる社会に〝変える〟には
市長:吉瀬さんがアスリートとして考えるデフスポーツの魅力をお聞かせください。また、デフスポーツの普及にはどのようなことが必要だとお考えですか。
吉瀬:「きこえないことを除けば何でもできる」ということを身をもって表現できるところがデフスポーツの魅力だと思います。そしてデフスポーツを知ってもらうことが必要だと思います。デフリンピックを知らない人がたくさんいる中で、開催まで残り1年を切りました。私たちデフアスリートも積極的にアピールし、デフリンピックが開催されることを知ってもらい、盛り上げていきたいです。そして、デフリンピックが子どもたちの夢を描くきっかけになればいいなと考えています。
市長:本対談の会場である市民総合体育館では、東京2025デフリンピックのバドミントン代表の選考会も行われるなど、トップアスリートが繰り広げる試合を観戦する機会を市民の皆さんへ提供しています。また、スポーツには言葉を超えて心が通じ合える魅力があります。みんなが一緒になってスポーツを楽しめる環境をこれからも作っていきたいと思っています。
続いて、倉野さんにお聞きします。本市では東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の際には市民ボランティアの皆さんと一丸となって取り組んできました。そして今大会でも、障がいの有無にかかわらず全ての市民が一緒に取り組む機会を作ることが目標です。
東京2025デフリンピックの大会エンブレムは、デフリンピックを通して〝輪〟がつながった先には、新たな未来の花が咲いていくことが表現されています。さまざまな方と関わる中で、この〝輪〟をつなげるために必要なことをお聞かせください。
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