文字サイズ
自治体の皆さまへ

新春対談 共に社会を変える-change society together-(2)

2/40

埼玉県富士見市

倉野:運営委員会には行政から派遣された職員が富士見市職員を含め6人いますが、そのうちの5人は手話言語が全くできず、初めはとても心配そうにしていました。そこで私が伝えたのは、コミュニケーションとは気持ちを通じさせることで、大切なのは障がいの有無にかかわらず目の前の人を尊重し、意見交換をして理解を深めることです。そのためには手話言語に限らず筆談やスマートフォンのアプリなどなんでもいいのです。人間関係の構築にはコミュニケーションの積み重ねが必要です。今では派遣職員も手話言語の間違いなどを気にすることなく積極的にコミュニケーションをとっています。最近は、大会を応援してくれる団体や企業の皆さんと関わる機会があるのですが、ろう者に会うのは初めてという方が多くいます。コミュニケーションをとることで理解が深まり、応援したいという気持ちが輪となり広がっていく。そうした輪と輪をつなげ、さらに大きく広げていきたいです。
市長:私自身、手話の魅力を知ることができた一人です。全国手話言語市区長会の活動の中で手話劇祭を観賞したときのことです。さまざまな手法や演出で表現された劇は、見る者全てを引き込み、手話を通じて表現者と観客が心を通じ合わせる瞬間に感動を覚えました。この感動を経験するには、まずは手話に挑戦することが必要です。加盟市区長の皆さんには、自分の名前や自治体名の手話から挑戦してもらい、少しずつでも一歩一歩前に進んでいければと考えています。その歩みによる輪が広がっていくタイミングにデフリンピックが重なるのではないかと考えています。
続いて、久松さんにお聞きします。東京2025デフリンピックの開催を踏まえ、共生社会の実現に向け、大会開催後の社会がどのように変わってほしいと考えているか、ご自身が担う役割とともにお聞かせください。
久松:私の活動の原点は中学生のときの出来事です。同級生が市内中学校の陸上大会に参加して優勝しました。しかし、ろう学校の生徒だからとの理由で県大会に出場することができませんでした。同級生は「きこえないからしょうがない」と泣いていました。当時のろう学校では、ろう者だから諦めなければならない、きこえる人に逆らっては駄目、我慢しなさいと教わってきました。なぜ、私たちは諦め、我慢しなければならないのかと考える日々でした。そして、きこえないのは自分の責任ではない、誰もが暮らしやすい社会に変わらないと幸せにはなれないということに気づきました。デフリンピックにはそうしたことを変える力があります。
社会との壁をなくし、挑戦する若者を増やしていくのが私の役割です。吉瀬さんのように頑張る人をサポートする環境を整えていくことも仕事の一つです。東京2025デフリンピックを通して、みんなの考え方を変えることで変革を促し、新しい時代につなげていきたいです。
市長:よりよい社会になるようにこれまでの経験を生かすという考えがさまざまな活動の原動力となり、この東京2025デフリンピックはつくられていきます。本市もさまざまな課題を抱えています。障がいの有無にかかわらず全ての人が暮らしやすいまちをつくっていくのが市長としての使命と考えてきましたが、この数年間、皆さんの活動に触れその想いをさらに強くしました。デフリンピックをより良いまちづくりの力にしていきます。

■想いをつなげ、共に社会を〝変えていく〟
市長:最後に、共生社会の実現に必要なことについてお聞きします。理想に近づくには、現状を変えることも必要です。障がいの有無にかかわらず、共に住みよい社会に変えるために今、一人ひとりができることについて、アドバイスやご意見などをお聞かせください。
久松:これまで私たちろう者は、仲間内の世界にいることが多くありました。きこえない子どもの中には積極的に話しかけることや自分の想いを表現しきれない子もいます。吉瀬さんのように夢に挑戦している人がいることを多くのきこえない子どもたちに知ってほしいです。我慢しなくていい、諦めなくていい、夢に向かって、もっともっと積極的に挑戦していけばいいと背中を押してあげてほしい。誰もが挑戦できる環境を整えていくことで、ろう者の意識も変わり、積極的に社会の一員として活動していけるような未来が来ると信じています。
倉野:さまざまな立場にいる人が互いに一歩踏み出して交流する・経験することが大事であると考えています。共生社会の実現のために最初になくさなければいけないのは、一人ひとりの固定観念です。きこえないことはコミュニケーションがとれないことではありません。社会はさまざまな人の集まりでできていて、意見や考えが異なることもありますが、対話を重ねることでより良い方向に変えていける場でもあると信じています。
吉瀬:いくつものスイミングスクールに入会を断られたのは、耳がきこえないから事故があった時に危ないとの理由でした。きこえる人でも、何らかの病気により配慮が必要な人もいます。それでも私たちろう者は、見た目では分からないから難しいと考えられています。しかし、身振りや手振り、紙に書くなどをしてもらえれば、目で見て分かります。私たちは分かり合えるのです。まずは、できないと決めつけるのではなく、どうしたらできるのか対話することが大切です。一人ひとりに向き合うことで、社会がより良い方向に進んでいくのではないかと思います。
市長:富士見市は「みんな笑顔☆ふじみ」の合言葉をもとに、理想の〝未来〟の実現に向かって取り組んでいます。これからの時代を担う子どもたちには、都心近くにありながらも豊かな自然が残る富士見市でのびのびと成長し、夢をかなえてほしいと思っています。このまちで生まれ育った子どもたちに、自慢のふるさとと思ってもらえるまちにしていきたいです。そのためにも目の前の課題はもちろん、少しでも先を見据えてまちづくりを進めていきます。本日の対談で皆さんと生み出したエネルギーを生かし、東京2025デフリンピックを成功させる。そして、その先の共生社会の実現に向けて、全国手話言語市区長会と共に全力で取り組んでいきます。

新春対談 終わり

※ICSDロゴに関する一切の知的財産権は、国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)が保有し、日本では全日本ろうあ連盟が管理しています。

問合せ:秘書広報課
【電話】049-256-9535

■「手話は言語」
手話とは、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する、音声言語とは異なる言語です。
市では平成27年12月市議会で「富士見市手話言語条例」が可決・成立し、手話言語の普及活動に努めています。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU