■思いつくまま 気のむくまま 82
◇ドクター内田のひとりごと「いかに生きるか」
3月になりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。長らく掲載させていただきました内田のひとりごと、今回で最終回です。83回も書いたなんて我ながら感心しています。本音を言うと締め切りに追われもうやめたいと思ったこともありました。でもここまで続けることができたのは、皆様からの温かい反応があったからこそです。あらためて感謝いたします。
私がエッセイを通して伝えたかったことは、「いかに生きるか」ということです。人生にはうれしいこと、悲しいこと、楽しいこと、辛いこと、いろいろあります。病気になって真剣に自分の人生について考えたり、大切な人を失って失意のどん底に落とされる時もあるでしょう。それでも生きていかないといけない。そのヒントになるような話を、医療の現場を通して経験したことや医療に全く関係ないことと重ねて、私の主観で綴ってきました。
あちこちで話してきた私の講演でも同じです。「どうやって死にたい?」という質問から始まりますので、初めて聞かれた方はドキッとするかもしれません。どうしてそういう話をするかというと、日本に「死生学」を広め根付かせたアルフォンス・デーケン先生(上智大学名誉教授、1932~2020)の影響を受けています。デーケン先生はDeath Education(死の準備教育)という、自分に与えられた死までの時間をどう生きるかと考えるための教育を提唱されました。つまり、死との向き合い方を学ぶことで、人生の最期まで心豊かに生きることを呼びかけたのです。その教育はすべての人にとって必要であると思っています。現在厚労省が推し進めている人生会議も同じことなのかもしれません。
医学の進歩に伴い医療は病気を治すことが最優先とされ、死はむしろ「医療の敗北」と位置づけられていました。若い方(今では70代も若い)が入院中に亡くなったら何かあったのかと思われることもあります。しかし医療は不確実です。以前より格段に進歩したとはいえ治せる病気もあれば治せない病気もあり、むしろ治せない病気のほうが多いのではとさえ思います。そう せしています。いう意味では医師の仕事は治せる病気を見落とさないことです。今の若い先生方は本当に多くの病気を見つけ治しています。こと町立病院の先生方は本当に優秀です。まれな病気を診断し、適切に治療したり専門に紹介することで治った方を多く見てきました。そんな先生方と一緒に仕事ができたことは本当に幸せでした。私はどちらかというと治せない病気の人に寄り添っていく役目でした…。
デーケン先生はユーモアも大切にしていました。そのキーワードが、「にもかかわらず」です。ドイツには「ユーモアとは『にもかかわらず笑う』ことである」という言葉があるそうです。ユーモアとは、ジョークやギャグではありません。「ユーモアとは愛と思いやりの現実的な表現」だそうです。苦しんでいるのにもかかわらず、相手に対する思いやりとしてのユーモア。私が淀川キリスト教病院研修中にお世話になった日本のホスピスの第一人者である柏木哲夫先生もいつも大事にしていました。
アメリカのことわざで「壊れた時計」というのがあります。針が止まっているその時計も、1日2回は正しく時間を指している、というのです。つらいことや意味がないと思われることの中に何か意味を見出すことが、生きていく力になるのかもしれませんね。
振り返ってみると「内田のひとりごと」は偉そうなこともたくさん書いてきました。では私がこの通りに生きているかと言えば、ノーです。でもこうして文章を綴ることで、私の立ち振る舞いや心の持ちようを修正していた気がします。皆さんに書いているつもりで、実は自分自身に向けて書いているんだなあと今さらながら気づきました。
これからも皆さんの人生、あなたらしく過ごすことができるよう心から祈念して終わりたいと思います。長い間ありがとうございましたー。
埼玉医科大学国際医療センター 内田 望
《外来からのお知らせ》
◇休診のお知らせ (2月6日現在)
▽3月21日(木)
・整形外科 吉原先生
・耳鼻咽喉科 水足先生
・総合診療科 内田先生
▽3月22日(金)
・婦人科 黒崎先生
・整形外科 吉原先生
▽3月26日(火)
・総合診療科 本淨先生
▽3月28日(木)
・耳鼻咽喉科 水足先生
▽3月29日(金)
・総合診療科 植木先生
最新の休診情報は、町立病院のホームページ「診療日カレンダー」でお知らせしています。
◇発熱外来
発熱や咳など呼吸器症状等のある人は、発熱外来で対応します。必ず、事前にお電話(【電話】75-2332)いただき受診方法をご確認ください。
対応時間:13:30~(受付時間:8:30~14:00)
[お子さんをお持ちの人へ]
小児については、小児科医による診察が望ましく、かかりつけ小児医療機関や埼玉県コロナ総合相談センター【電話】0570-783-770(24時間対応)に電話などでご相談ください。
問合せ:国保町立小鹿野中央病院(小鹿野町小鹿野300番地)
【電話】75-2332
【FAX】75-3313
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