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自治体の皆さまへ

わたしたちの健康「子宮頸がんワクチン」

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埼玉県志木市

朝霞地区医師会/松田亜季(まつだあき)

皆さんは、子宮頸がんをワクチンでほぼ予防することができるということをご存知ですか?
子宮頸がんは、子宮の入り口(子宮頸部)に発生するがんです。1年間に約1万人の人がかかり、約2,800人の方が亡くなっています。日本では、近年子宮頸がんの患者数・死亡者数は増加しており、特に30歳~50歳までの世代での増加が問題となっています。この年代の女性にとっては妊娠・出産・子育てに影響する可能性があるからです。
子宮頸がんの95%以上は、ヒトパピローマウイルス(以降HPVと呼びます)の感染によることがわかっています。HPVには100種類以上の遺伝子型が存在し、子宮頸がんの発生に関連する遺伝子型は高リスク型HPVと呼ばれます。高リスク型HPVは16型が約半数を占め、18型が10%程度、そのほかに31型、33型、45型、52型、58型などが知られています。
HPVの感染経路は性的接触です。HPVは性交渉(セックス)により子宮頸部に感染します。HPVは珍しいウイルスではなく、性交渉を経験すると男女問わず多くの人が感染します。自分の免疫の力で自然に治癒する場合が多いですが、一部は前がん病変や子宮頸がんに進行してしまいます。
HPV16型、18型の感染は、HPVワクチンにより予防することができます。HPVは性交渉により感染するため、性的接触を経験する前にHPVワクチンを打ち、HPVへの感染を予防しておくことが重要です。
子宮頸がんになっても最初は無症状のことが多く、病気が進行すると不正出血や腹痛などの症状が出てきます。特に症状がなくても、検診を受けることで前がん病変を見つけ、病気が進行する前に治療することができます。子宮頸がんの原因の多くがHPV感染ですので、一度でも性交渉をしたことがある人は定期的な検診が必要です。
世界では、多くの若い女性がHPVワクチンと検診を受けることでHPVに対する集団免疫を獲得することができ、今世紀中に排除・撲滅することが可能であるといわれています。実際に日本を除く多くの先進国では、HPVワクチン接種率と検診率が上昇しており、子宮頸がんの患者数・死亡者数は下がってきています。これからは発展途上国でのHPVワクチンと検診を普及させようという動きが出てきています。
ではなぜ日本では子宮頸がんの患者数は増えているのでしょうか。日本でも2013年にはHPVワクチンの定期接種が始まり、これから普及していくという時に、HPVワクチン接種後の全身の痛みや歩行障害などの副反応を訴える被害者の声がマスコミに大きく取り上げられました。副反応に対する評価が十分にされないまま、厚生労働省は積極的接種推奨の差し控えを自治体に要請し、HPVワクチン接種率が下がってしまい、世界から遅れをとってしまいました。
その後、日本では12~18歳の女性のHPVワクチンの接種者と未接種者で調査し、HPVワクチンと副反応の因果関係は明らかではないということがわかりました。この結果を受けて2021年11月に厚生労働省から自治体に対してHPVワクチン接種を再推奨する通知があり、これにより日本でのHPVワクチン接種はようやく本格的に普及されていくことになりました。

万が一ワクチン接種後に生じた症状にお困りの際にはお一人で悩まず、まずは接種した医療機関に相談してください。さらに専門医療機関の受診が必要と判断された場合には都道府県別に相談窓口をご案内します。
HPVワクチンの定期接種対象者は、12歳~16歳(小学6年生から高校1年生相当)の女性です。また、25歳までの女性はHPVワクチン接種推奨の差し控えにより接種機会を逃した可能性があるため、キャッチアップ接種対象者として公費助成を受けることが可能となっています。将来の子宮頸がん予防のためにHPVワクチン接種をしてみませんか?

問合せ:朝霞地区医師会
【電話】048-464-4666

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