朝霞地区医師会/玉木雅子(たまきまさこ)
■乳がんについて
乳がんは部位別がん罹患(りかん)数で日本人女性に最も多いがんです。
2019年に新たに乳がんと診断された方は約97,000人にのぼり、女性の生涯を通じた乳がん発症率は9人に1人とされています。
乳がんは30代後半から急増し、30歳~64歳の世代では女性のがんによる死亡数で1位です。乳がんは働きざかり・子育て世代の比較的若い世代もかかるがんです。こうしたことから、幅広い世代で早期発見が重要になっています。乳がんは早期に発見すれば治るがんであるため、乳がん検診を受けることやセルフチェックがとても大切です。
■乳がんの症状
早期の乳がんは自覚症状が乏しいですが、進行すると症状が現れはじめます。乳がん発見のきっかけとして最も多いのは「しこり」です。それ以外では、ひきつれ、乳頭からの分泌物など様々な症状があります。乳房にちょっとした異変を感じたら、できるだけ早く受診することが乳がんの早期発見につながります。
■乳がんの原因
乳がんの発生には、女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られています。経口避妊薬の使用や、初潮が早い、閉経が遅い、出産経験がない、初産年齢が高い、授乳経験がないなどが、乳がんを発症するリスクを高めると考えられています。閉経後は脂肪組織でエストロゲンがつくられるため、閉経後の肥満もリスクとなります。そのほか、飲酒、運動不足といった生活習慣や、糖尿病の既往なども乳がんを発症するリスクを高めると考えられています。また、一親等(自分の親または子)で乳がんになった血縁者がいる場合、乳がんのリスクが高いことが分かっています。遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)という、遺伝的に乳がんや卵巣がんのリスクが高い家系の方が、日本でも存在することが知られています。この疑いのある方は、30歳代からの乳がんの発症が多いとも言われ、専門的な知識を持った医師の受診が勧められています。
■乳がんの検査方法
乳がんの有無を調べる代表的な検査に、マンモグラフィと超音波検査(エコー検査)があります。がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させることです。
□マンモグラフィ検査とは?
乳房専用のX線撮影(レントゲン)のことで、乳房を2枚の板で挟んで固定し、乳房を薄く広げて撮影します。乳がんの初期症状である「微細な石灰化」の発見を得意とします。
□エコー検査とは?
乳房の表面にゼリーを塗り、プローブという小さな器機で超音波を当てて、乳房内の様子を画像化して調べる検査です。しこりの形状、石灰化の様子、腫瘍の有無などを診断します。また、放射線による被ばくがないため、妊娠中でも検査が可能です。
□マンモグラフィとエコー検査、どちらを受ければいいのか?
マンモグラフィは死亡率を下げる効果が証明されている唯一の検査です。しかし、マンモグラフィにエコー検査を併用した場合は、マンモグラフィ単独に比べて、1.5倍多くの乳がんを発見できたというデータがあります。特に、乳腺が多い高濃度乳房の場合には、マンモグラフィ検査では白く映ってしまい、乳がん検出感度が低いため、エコー検査との併用が有用とされています。
マンモグラフィ検査では微細な石灰化病変を発見しやすく、エコー検査は小さい腫瘤性(しゅりゅうせい)病変の検出に優れる、などの特徴があります。それぞれ観察する対象や検査画像が異なるので、併用して受けることが理想的です。
■ブレスト・アウェアネスという言葉をご存じですか?
「乳房を意識する生活習慣」という意味で、乳がんの早期発見・早期治療につなげるためにとても大切なものです。まずはご自身の乳房の状態をよく知るために、乳房をセルフチェックすることからはじめましょう。
□セルフチェックの方法
・毎月、月経開始から7~10日後に行いましょう。
・閉経後の人は、毎月、チェックする日を決めて行いましょう。
日常生活の中で気軽に取り組み、習慣づけることが大切です。着替えや入浴、シャワーなどの際に、ご自身の乳房を見て、触ってください。変化に気づいたら、次の検診を待ったり、自己判断で先延ばしにしたりせず、医療機関へ受診することが重要です。
■おわりに
乳がんは早期の段階で発見できれば、完治する可能性が高いがんであり、定期的に乳がん検診を受けることがとても重要です。
早期の段階で発見できれば、治療方法も軽くなり、体と費用の負担が少なくなります。症状がなくても、1年に1回は検診を受けていただければと思います。
問合せ:朝霞地区医師会
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