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自治体の皆さまへ

わたしたちの健康「梅毒について」

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埼玉県志木市

朝霞地区医師会/池田直弥(いけだなおや)

日本での年間の梅毒感染者数は2000年から500~900人の間で落ち着いていましたが、2013年頃から急速に増加しています。当初は訪日外国人の増加が原因と思われており、新型コロナウイルス感染症の流行を機に海外との往来が減少することから梅毒感染者も落ち着いてくると予想されていました。しかしながら、その想定とは裏腹に感染者数は増加を続け、2023年の速報値では13,000人以上となっています。その原因は手軽にスマートフォンで出会い系サイトにアクセスすることにより性交渉ができてしまうことによるものと考えられます。
繁華街で営業している性風俗業者は、従業者に定期的に性病検査を課しているようですが、出会い系アプリの利用者はそのような検査をしていない方が多いようです。また、個々のユーザーの性病に関する知識の不足があるようです。
梅毒は梅毒トレポネーマという病原菌による感染症です。感染してすぐに症状が出るわけではなく、3週間前後で感染部位(性器や口腔)に「できもの(シコリやタダレ)」がみられることが多いです。この状態を第1期梅毒といいます。性器からの感染の場合は鼠径(そけい)部のリンパ節、口腔の場合は首のリンパ節がしっかりと触れることもあります。「できもの」はしばらくほっておくと自然に治ってしまいます。これが梅毒の発見を遅れさせる原因のひとつです。
感染後3か月くらい経過すると病原菌が全身に広がりバラ疹(しん)と呼ばれる小さなバラの花に似ている発疹が全身にあらわれます。特徴的なのは手のひらや足の裏にも発疹がみられることです。この時期に倦怠(けんたい)感・発熱症状が起きる場合もあります。この第2期梅毒までは早期梅毒という状態でしっかりと治療すれば生命に関わることはありません。ただ、この状態を過ぎても梅毒が未治療であると梅毒トレポネーマはさらに内臓に障害をあたえ、心血管障害・神経障害・全身の腫瘍(ゴム腫)などの症状を引き起こし、第3期・第4期梅毒といわれる後期梅毒という病期となります。
最近では梅毒感染したお母さんから生まれてくる赤ちゃんが先天的に梅毒に感染しているという問題もみられるようになってきました。垂直感染した赤ちゃんは先天的な障害を持ってしまうので妊娠前の治療が大切です。
しこりや湿疹がある方はもちろん、まったく症状はないけれど過去に梅毒に感染した可能性がある方は梅毒の検査を実施している医療機関を受診してください。梅毒の感染の有無は感染部位から直接梅毒トレポネーマを検出する方法もありますが、血液検査により判定することが多いようです。血液検査はTPHA(トレポネーマ受身赤血球凝集反応)とRPR(梅毒脂質抗体定量)の2つの項目を調べることにより判定されます。一般的には、
(1)TPHA(陰性)・RPR(陰性)は感染なし
(2)TPHA(陰性)・RPR(陽性)は早期の梅毒の感染または偽陽性で梅毒の感染ではない
(3)TPHA(陽性)・RPR(陰性)は過去に梅毒感染の既往あり
(4)TPHA(陽性)・RPR(陽性)は現在梅毒感染中
と判定されますが、最近では早期の梅毒の検査結果が(1)(3)のパターンであるケースも報告されています。そのため、定期的に血液検査を実施することが大切です。
梅毒は全身へと進行する感染症ですが、早期梅毒までに治療すれば完治することができます。1回のペニシリンGの注射や抗菌剤を4週間内服することで治療可能です。後期梅毒でも薬の回数を増やすことで治療可能です。
しっかりとした倫理観を持ち感染するような行為をしないことが一番重要ですが、感染の機会を持ってしまったならば、感染を他人に広げない、自分の健康を守るためにも検査を受けることが重要です。

問合せ:朝霞地区医師会
【電話】048-464-4666

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