■藤原歌劇団・日本オペラ協会所属/オペラ歌手 原 優一(はら ゆういち)さん(市内出身・在住)
プロとして4年目にして来シーズンの同歌劇団本公演「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」へのデビューが決定した、今オペラ界で大注目の若手新進テノール※。所沢小・中学校出身で、地元の友人と飲みに出掛けるのが毎月の楽しみ。月一で訪れるほどのディズニー好き。大学時代は永江恭平選手の活躍見たさに、西武ドームでアルバイト。焼き団子はしょうゆ派。
◇出会いに導かれて、真のオペラを知る
「背伸びせず等身大で歌うことが安定の秘訣(ひけつ)」と大らかな笑顔で話すのは、原 優一(はら ゆういち)さん。導かれし天性のオペラ歌手だ。
生まれも育ちも所沢。「幼少期は西所沢の山車で太鼓をたたいたこともあった」と語る原さんは、当初クラシックとは無縁の生活を送っていた。中学はテニス部で高校も普通科、両親が音楽をやっていたわけでもない。ただ、歌が好きで、音楽なら良い成績が取れると感じていた。
原さんが最初に描いた夢は「歌のお兄さん」。入り口は「テレビに出たい」という軽い気持ちだった。夢を叶(かな)えるべく音楽大学へ進学したが、卒業時のオーディションでは不合格。進路に悩んでいたところ、歌の先生の勧めで「歌手」としての勉強をするため別の大学に編入することに。そこで「一度だまされたと思ってオペラをやってみなさい」と導かれる。
「軽く考えるのは自分の良くないところ」と言う原さんだが、実際は常に自らに期限を課していた。「大学に編入できなければ」「歌劇団のマスタークラスに入れなければ」「修了後仕事が無ければ」「30歳までに本公演デビューができなければ」音楽をやめよう…人との出会いに導かれ、全てを実現させてきた。
修了後、次々とオペラの主役級に抜てきされていたが、とある公演で「直立のまま歌うだけで、舞台上に動きがない」と物足りなさを感じてしまう。
そんな時、共演した歌手に衝撃を受けた。「その人が舞台にいるだけで面白いんです」。舞台の雰囲気を自ら変えていく術(すべ)を学んだ原さん。今まで、自身が動かずとも周りの演技に盛り立てられていたことを実感し、演出家の要求に応えるだけだったオペラ感が変わった。「動作一つでも、なぜそのコップを取るのか、その感情によって間は異なるし、コップの取り方も違ってくる」。演技の奥深さ、自分も含め皆で作り上げる喜びを知った。「最終的に演奏を届けるのは歌手だが、背景には多くの人による下準備がある。それらを背負えることが演者としてのオペラの魅力」と語る原さんは根っからの舞台人。その重圧が心地良いと言う。
「オペラはただ歌うのではなく、ストーリーがある『演劇』。日本語の作品や、外国語でも字幕があり、同じ演目でも解釈によって異なる作品になる。ぜひ映画やミュージカルと同じように、気軽に劇場へ来て、生の声に包まれる感覚と、特有の世界観を楽しんでほしい」。少年のように自然体の原さんだが「歌劇団を背負えるような次世代のテノール歌手になりたい」と、心は熱い。次はどんな役を生きるのだろうか。心待ちにしたい。
(取材:齋藤)
※テノールとは高い音域の男声歌手のこと。
〔memo〕
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・日本オペラ振興会HP
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