■あたまをコツンとぶつけたら?~頭部打撲経過観察のコツ~
脳神経外科医師 遠藤昌亨(えんどうまさみち)
「コツン! いてててて・・・」誰しも一度は頭をぶつけたことがあるかと思います。机の角であったり、食器棚の戸であったり、中には転んでしまって頭をすりむいてしまった人もいるかと思います。そういったとき、「頭の中に出血をしていないかしら?」と心配になるのではないでしょうか。
多くの頭部打撲においては頭蓋内出血(ずがいないしゅっけつ)を起こす心配はないと思われますが、危険なサインを知っておくことは大切です。意識の具合が悪い場合は緊急での受診をお勧めします。
一度頭部打撲をすると頭痛を起こすことはあると思います。一時的であれば問題となることは少ないですが、その中でも注意すべきポイントがあります。「経過をみていたが、“どんどん”頭痛がひどくなってきた。“どんどん”吐く回数が増えてきた」のように、症状が新しく追加されたり、強くなったりする場合は医療機関に受診相談することをお勧めします。
また、頭部打撲直後は問題がなくても大体1か月前後で起こる病気が知られています。「慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)」という病気です。高齢の人で、以前頭部打撲を起こした人が“時折”起こす病気です。「手足が動かしにくくなってきた。歩くのがゆっくりになって転びやすい。椅子から立てなくなった。ベッドから起き上がれない、動けない」というように徐々に進行していきます。比較的高齢の人に起こりやすいですが、局所麻酔での手術で症状の改善が見込めるものですので、治療をお勧めします。
「最近調子が変で体が動きにくい。そういえば以前頭をぶつけたことがあるかもしれない」。そういった点で思い当たる人、気になる人は医療機関へ受診してください。ご家族に頭部打撲をした人がいる場合も、こうした視点で観察していただけると診断がスムーズですのでご協力いただければ幸いです。
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