■ロボット支援人工膝関節手術
整形外科医師 小林甫(こばやしはじめ)
タケコプターで空を飛び、こんにゃくを食べれば言語が翻訳され、ドアを開けば好きなところに行けてしまう。そんなドラえもんの世界のような未来はまだ訪れていませんが、今まで人の手のみによって行われていた人工膝関節手術は、今やロボットの支援を用いてより正確に、患者さん1人1人の関節に合わせた手術ができるようになりました。
人工関節の手術は、患者さんの傷んだ関節を金属とポリエチレン等でできた人工関節に置換する手術です。関節の形は患者さん1人1人で違い、傷み方もそれぞれ違います。手術は患者さんごとに関節を考え、人工関節がピッタリはまるよう入れなければなりません。1mm単位で調整され手術した人工関節は、あたかもオーダーメイドのスーツを身にまとったかのような、大きすぎず、小さすぎず、居心地の良い、まるで若い頃の自分の膝に戻ったかのような歩き心地となることが期待できます。
2024年から当院でもロボット支援人工膝関節手術が導入されました。執刀医のサポートを行うように設計されたロボットで、あくまで手術をサポートし医師の動きに従うもので、ドラえもんの未来のようにロボットが自立して手術を行うわけではありません。従来の手術では骨を削る量や角度は医師の経験や技術、感覚に頼る部分がありましたが、ロボットが関節の位置を正確に把握することで、肉眼では分かりにくいズレも可視化できるようになりました。
しかし、実際のところロボット支援手術による人工関節手術がこれまで行われてきた熟練した医師による手術と比べて、全ての人によりよい結果をもたらすかについては、新しい技術のためまだよく分かっていません。当科では患者さんの承諾のもとに、この問題について研究し、よりよい医療に役立てていこうと考えています。
膝の痛みでお悩みの方、まずは一度主治医とご相談ください。治療方法のひとつとして選択肢が増えるかもしれません。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>