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文化財を訪ねて―見てある記―

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埼玉県桶川市

■人々を結ぶ芸能「万作(まんさく)」
日々農作業に打ち込んでいた農村の人たちは、厳しい農作業の合間の娯楽の一つとして万作を踊りました。万作は、埼玉県をはじめとした関東一円に分布する民俗芸能として知られています。。江戸時代末期から明治にかけて江戸の願人坊主(がんにんぼうず)や飴屋芸人(あめやげいにん)といった芸能者が伝えた唄や踊りが所作に取り入れられ、万作の芸風ができあがったと言われています。戦前の万作は、手踊りの他に「段物(だんもの)」(途中で台詞の入る演劇的な要素が加わったもの)や「茶番」といわれた劇もさかんに行われていました。戦後、段物の伝統は途絶え、手踊りを中心に今日まで伝承されています。
今回は、市内に伝承されている5つの万作保存会をご紹介します。

◇下日出谷の万作/下日出谷万作踊り保存会(下日出谷)
下日出谷の万作は、明治40年頃4、5人で手踊りと段物を習ったことから始まりました。昭和に入ってからは手踊りだけが伝えられています。日出谷氷川神社の祭礼や市内の芸能行事で演じられています。

◇岡村の万作/岡村万作保存会(川田谷)
岡村の万作は、越後から米搗(こめつ)きの出稼ぎに来た人から教わったことに始まりました。「万作芝居」が行われていた時期もありましたが、現在は手踊りのみで、10月の岡村地区の祭礼(お日待ち)などで演じられています。

◇諏訪の万作/諏訪万作保存会(川田谷)
昭和30年代の町村合併時に、地区の融和を目的として薬師堂喜楽連から万作を教わり始まりました。毎年8月に行われる諏訪神社祭礼では、花笠や手ぬぐいを使った「銭輪(ぜにわ)」・「下妻(しもづま)」・「伊勢音(いせおんど)頭」、「八木節(やぎぶし)」などが披露されます。

◇松原の万作/松原万作保存会(川田谷)
松原の万作は、獅子舞(ししまい)、お囃子(はやし)、真言(しんごん)とともに地域の人たちに親しまれ踊られています。松原八幡神社大祭で獅子舞の合間に演じられています。花笠や手ぬぐいを使った手踊りなど息の合った演技で、観衆を楽しませてくれます。

◇三田原の万作/三田原万作連(川田谷)
三田原氷川神社の祭礼などで披露される演目は、「しっさき」「伊勢音頭」「手払い」「銭輪」「口説き」などです。特に「しっさき」では、かつて行われていた万作芝居をもとにした「道者(どうしゃ)の踊り」という三田原独特の演目が演じられています。

万作は、主に男性が担い手となり伝承されてきましたが、今日では主に女性が担い手となり地域の娯楽の一つとして親しまれています。万作は今も昔も「地域の人々を結びつける」民俗芸能と言えるでしょう。10月は各地域の祭礼などで万作が披露されますので、こうした機会にぜひ、大切に守り伝えられてきた郷土の芸能をご覧になってください。

問合せ:文化財課
【電話】786-4009

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