■映画と、言葉と、桶川暮らしのこと
いま注目のクリエイターが、桶川市に暮らしています。今年、初小説が芥川賞候補となり、国語教室代表など多彩に活躍する向坂くじらさんと、市内で撮影した監督映画が年内に劇場公開予定の広田智大さんです。同世代のおふたりに、あれこれ語っていただきました。
◇広田智大さん/映画監督
ひろた・ともひろ 1992年桶川生まれ。多摩美術大学卒。青山真治監督のもとで映画に触れる。桶川市内等で撮影した初の長編映画『朝の火』が、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024国内コンペティション長編部門ノミネート。今冬都内にて劇場公開予定。カメラマン、エディターとしても活動中。桶川市在住。
◇向坂くじらさん/詩人
さきさか・くじら 1994年名古屋生まれ。慶応義塾大学卒。詩人、国語教室ことぱ舎代表。Gt.クマガイユウヤとのユニット「Anti-Trench」で朗読を担当。2022年第一詩集、2023年初エッセイ集を刊行。2024年、初小説『いなくなくならなくならないで』が芥川賞候補作。桶川市在住。
―向坂さんの話題の著作、広田さんはもう読まれたそうですね。
広田:桶川市のSNSで知って、読みました。ふだんは本を全然読まなくて、大学時代に読んだ太宰治以来かな。
向坂:ありがとうございます。太宰なんて、超クラシカルですね。
広田:向坂さんの本はとても面白くて、3冊すぐ読めてしまいました。特にエッセイって、映画でいうドキュメンタリーのような鋭さがあって、恐ろしいなと思いました。エッセイの中で、向坂さんがよく泣くんです。最初は本気で心配していたんですけど。
向坂:やさしい(笑)
広田:今日ここへ来るとき、駅西口公園の健康遊具にぶら下がっている若い人を横目に、こういう風景が桶川のいいところだなぁ、なんて思っていたら、その人が向坂さんで。くじらが棒にぶら下がっていた…。
向坂:案外ぶら下がっていられなくて、ショックを受けたんです(笑)。
広田:国語教室もやられているんですよね。
向坂:もともと国語の講師と、詩の講座の両方をやっていましたが、ちょっとずつ違うことを言っているのが気にかかって。矛盾しない形でやりたかった。あと、詩の講座の子たちは1回会ってそれきりだったので、毎週会ってひとつの場所でやることに意味があるのかなと。そこへ夫の縁があって桶川の家に暮らすことになり、ここに根を下ろそうと、塾を開いてみた形です。
―子どもを通じて桶川を知ることも?
向坂:子どもたちのすごくローカルな噂話を聞くのは楽しいです。あの家の子とその家の子が付き合っているよとか(笑)。桶川を知ることになるかはわかりませんが…。
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