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歴史散歩〔第349回〕

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埼玉県毛呂山町

■~毛呂山の昔話 たぬきに化かされた話~
毛呂山町でも近年、キツネはすっかり見なくなりましたが、たぬきは山間部に限らず平地でも時々見かけることがあります。
キツネと同様、たぬきも人を化かすと言われていました。毛呂山では、たぬきは「ムジナ」という妖怪(ようかい)とほぼ同じものと考えられており、人間にとりついたり、道に迷わせたりすることもあると言われていました。毛呂山に伝わるたぬきの伝承の一部をご紹介します。

▽(1)青坊主(あおぼうず)に化けたたぬき
阿諏訪と鎌北境のあたりの山中に若い夫婦が住んでいた。ところが毎夜、杉皮葺(すぎかわぶ)きの屋根を獣(けもの)が爪でひっかく音が聞こえるという。
ある日の夕暮れ、夕飯の買い物に奥さんが家を出ると、ふと妙な感じがして顔を上げた。すると目の前に仁王(におう)のような青坊主が立ちはだかっていた。2人はしばしにらみあっていたが、いよいよ青坊主が奥さんに近寄ろうとしたとき奥さんが大きな悲鳴をあげた。その声に合わせ近所の家々の犬たちが鳴き始めた。
さすがの青坊主もおじけづき、姿を消すと1匹の古狸(ふるだぬき)がやぶのなかへと逃げ込んでいったという。

▽(2)「油屋(あぶらや)さん、こんばんは」
明治か大正のころ、油屋を営んでいた市場の祖母の家によくたぬきが遊びに来た。
夜中に作業していると「油屋さん、こんばんは、油屋さん、こんばんは」と呼びながらたぬきが障子を開けて入ってくるという。たぬきは土間のいろりの向こう側にあぐらをかいて座り、暖をとっている。
作業を終えて後始末を始めると、たぬきも静かに帰っていった。家人もそれに慣れてきて、たぬきはたびたび暖まりにきたそうだ。

たぬきの伝承は青坊主に化けて驚かしたり、いろりに暖まりに来たりなど、どこかユーモラスな印象があります。
しかし、ほかにもムジナに取りつかれた話など人間に恐怖を与えるものもあり、妖怪ムジナとしてのたぬきは恐ろしい存在だったようです。たぬきもキツネと同様、身近な動物ですが妖怪とも考えられていたのです。

※青坊主
通常は髪の毛をそったばかりの人の頭を指すが、妖怪の青坊主という場合は大きな人影や僧の姿をしたものが多い。

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