■自分だけの物語をつづっていくために
訪問看護師 髙橋 由美(たかはし ゆみ)氏
Dさん(80代男性)の希望は最期まで自分らしく慣れ親しんだ家で家族と過ごすことでした。Dさんは、肝臓がんの終末期で「入院はイヤだ」と病院を拒否し、延命処置はしないと決めていたようです。
自宅で過ごせるうちは自宅療養をさせてあげたいという娘さんの思いから、訪問看護は始まりました。また、Dさんには、最期にどうしてもやりたいことがありました。それは娘さんと海外旅行に行くことでした。Dさんの願いを叶えるため、医療関係者で話し合い、薬と酸素を持って出かけることでその願いは実現しました。いよいよ痛みが強くなり、入院か在宅か迫られる選択の中、家にいたいというDさんの希望に寄り添いながら、娘さんや関係する医療・介護の職種の方々と何度も話し合いを重ね、より良い方法を選んで支援しました。最期は慣れ親しんだ家で娘さんが見守る中、静かに旅立たれました。
人生は最期まで選択の繰り返しです。訪問診療の医師は、「人生の最期を考えることは、どう生きるかを考えること」と話します。迫られる選択の中でどうしたいか、何をしたいか、その時々で人生会議を重ね自分だけの物語をつづっていく。それは大切なご家族との物語でもあります。自分らしく最期を迎えられたとき、ああいい人生だったなあと思えるように、私たち訪問看護師はそのお手伝いをしていきたいと思っています。
■私の意思表示ノート
自分が希望する医療やケア等について大切な人と話し合い、その意思を記すために、埼玉県医師会が作成したノートです。長寿いきがい課で配布していますので、ぜひご活用ください。
埼玉県医師会のホームページからも、データのダウンロードができます。
「埼玉県医師会私の意思表示ノート」で検索するか、本誌掲載のコードからご確認ください。
■もっと詳しく!
厚生労働省のホームページには、人生会議の普及・啓発のショート動画や再現VTRなどの情報が掲載されています。人生会議を進める上で参考にしてみてください。
また、市ホームページには人生会議についての情報や、ACP普及啓発出前講座の動画などが掲載されています。詳しくは本誌掲載のコードからご確認ください。
■大切にしている価値観を共有しませんか?
熊谷薬剤師会 理事 薬剤師 田島 敬一(たじま けいいち)氏
「自宅で最期まで暮らしたい…。」
こんな言葉を聞くことがよくあります。自宅で過ごしたい理由も人それぞれです。
「ペットとずっと暮らしたい」という思いを持った方もいらっしゃいますし、「趣味を自宅で満喫していたい」という方もいらっしゃいました。
もちろん残念ながら、思いを叶えるのが困難な場合も多いのですが、家族のサポートのほかにも様々な医療・介護・福祉のサービスを活用しながら希望を叶えられることもあります。最近では、自宅において病院で行われているような点滴などの治療を受けることもできます。このとき薬剤師は、在宅訪問をして医薬品をお届けし、薬の整理、薬の効果・副作用を確認し医療や介護の専門職の方々と連携しながら支援を行う在宅訪問管理というサービスを担当します。「満足のいく死」というのはどんなときにおいてもないとは思いますが、関わった患者さんの中には、自分らしく人生の最期を迎えられたのだろうなと感じる方もいらっしゃいます。
大切なのは、ご本人が大切にしている価値観(例えば、家族やペット、友人との時間や趣味など)を支援者が共有していることなのかなと思います。
縁起でもないと考えずに元気なときから人生会議をしてみませんか。
■相談・お問合せ
人生会議を行うときは信頼できる家族や友人など、大切な人と相談し決めていくことが大切です。しかし、意見が合わずまとまらなかったり相談できる人がいないなどの場合は、かかりつけの医療機関や下記の窓口へご相談ください。
・熊谷市在宅医療支援センター(上之3854熊谷生協病院内1階)【電話】048-577-7625
在宅医療や療養に関する相談窓口です。
相談受付:月~金曜日9時〜17時、土曜日9時〜13時(日曜日、祝日、年末年始を除く)
・大里広域地域包括支援センター
高齢者の皆さんを支援する総合相談窓口です。
※地域包括支援センターは地域ごとに担当が分かれています。どのセンターに問い合わせたらよいか分からない場合は長寿いきがい課にお問い合わせください。
問合せ:長寿いきがい課
【電話】内線217・451
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