■人工関節を勧められたのですが!
ある日、それまで受診していた医師から人工股関節置換術の提案をされた方は少なくないと思います。それは不安を感じるのも無理からぬところです。
そもそも股関節や膝関節などは、体重を支える重要な大関節で、それだけに日々の負担は想像を絶するものです。健康で正常な関節軟骨が様々な理由で磨り減り、歩行時のみならず安静時にも関節痛が起こり、お薬やリハビリなどでも苦痛が和らげられないと判断した時点で、我々医師は患者様に提案します。
では、皆さんにとって人工関節のどういう点が不安なのでしょう。(1)人体に機械を入れて大丈夫?、(2)長持ちするの、緩んだりしない?、(3)散歩や運動はできるの?、(4)大きな手術で輸血するの?、(5)外れたりしないの?、(6)治療費は高いの?、(7)再手術も出来るの?、(8)そもそも痛みは取れるの?などの質問が出そうですね。
それでは、順にお答えします。(1)世界で人工関節が開発、実用化されたのは50年ほど前からで、様々な材質、形状の改良が加えられ、今では人体に馴染みの良い表面加工が施されたチタン合金を使用します。MRI検査も出来ます。(2)材質は金属の他、一部にセラミックや高硬度のポリエチレン樹脂を使用します。器具の摩耗や破損は僅かで、大切に生活すれば30年以上の耐久性がありますし、緩むこともほぼありません。(3)通常の散歩、バードゴルフなどのレジャーは充分可能です。アメリカなどではマラソンやテニスなど楽しんでいます。(4)手術方法の進化で、傷も小さく、手術時間も短く出来るようになり、輸血の必要性はほんの僅かです。(5)脱臼の危険性は術前術後に詳しく指導しますので大丈夫です。(6)高額医療の対象ですので自己負担分には上限があります。(7)様々な理由で僅かな方に再手術は行われます。主に器具の摩耗などで再置換することになります。(8)痛みの原因とされる関節軟骨の摩耗部位は除去されますので、術前に苦しんでいた痛みはほぼなくなります。
最後に付け加えれば、安全とは申し上げてもやはり手術ですので、安心して受ける事が出来る方は基本的に全身が健康でなければなりません。糖尿病や心臓病、腎臓病、肺疾患などの基礎疾患は術前に精査し、手術可能か判断させて頂きます。
熊谷市医師会 酒巻 治彦(さかまき はるひこ)
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