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(特集)日本の伝統文化を紡ぐ、狭山の職人たち(2)

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埼玉県狭山市

■優雅に桃の節句を彩る「ひな人形」

大野勉さん
昭和20年代に父が創業した大野人形の2代目で、職人歴57年。3代目の娘夫婦とともに、年間で約1,200体のひな人形を制作。長年培った技術を基に現代のトレンドに対応した作品を作り続けている。

ひな祭りのシンボルで、女の子をけがや病気から守り、将来幸せな家庭を築けるようにという願いが込められているひな人形。入間川在住の大野勉さんは、家族4人で協力しながらひな人形を制作しています。

●作るのは、ケース飾り用のおひな様とお内裏様
父が事業を始めた頃は、ひな人形を家庭で飾る文化が今よりも盛んでした。徹夜をして作業に励む両親の姿を幼い頃から見ていたので、手伝いたいと思ったことがこの仕事を始めたきっかけです。うちでは問屋から依頼を受け、ひな人形の素胴の部分(顔以外の部分)を制作しています。以前は段飾りが一般的でしたが、現代ではケース飾りを購入される方が多いですね。ケースに入る大きさの親王飾り(男雛と女雛)をメインで制作しています。

●「振り付け」が腕の見せどころ
制作は、金襴(きんらん)*を裁断するところから始まります。今は家族4人で分業しており、50組単位を7~10日で作り上げています。数ある工程の中で最も重要なのが、人形の腕を曲げる「振り付け」と呼ばれる工程です。ここは人形の個性が1番出る部分。この作業は私が担当しており、職人としての腕の見せどころです。左右対称になるように、着物に自然な凹凸が出るように、力と気持ちを込めています。
*金襴…錦織りの一種で、模様が金糸で織られているもの

●SNSで見かける喜びの声を励みに
私たちが制作したひな人形は、問屋へ納品した後に顔と小道具を加えて完成となります。お客様の手に渡る時には作り手の情報は明記されないため、お客様の声を聞くことはほとんどありませんが、SNSなどでひな人形に関する投稿を見ることがあります。以前、沖縄に住んでいる方が「きれいなお人形だった」という言葉を添えて写真を投稿していたのですが、振り付けから、うちで作ったものだとすぐに分かりました。それくらい振り付けは職人の個性が出る部分なんですよ。手にした方が喜んでくださっていることが、1番の励みになります。

●より良いものを作るため、日々勉強
問屋から依頼を受ける際には、着物に使う金襴は指定されますが、パーツによっては作り手が選んで良い場合もあります。そのときは、腕や着物の裏地など全国各地からこだわりのパーツを取り寄せています。ひな人形で華やかさを演出している着物に使う金襴も、1年ごとにトレンドが変わるんですよね。展示会へ足を運んで、こちらから問屋さんへ提案することもあるんですよ。近年では、白やパステルカラーなどの淡い色が人気の傾向にあります。まだまだ勉強することが多いのですが、より良いものを作り上げていく楽しさを感じながら制作しています。

●時代に沿ったひな人形を
私が父から受け継いだ頃と比べると、ひな人形というものはだいぶ変わってきました。少し寂しくもありますが、伝統文化を残す上では変化を加えていくのも大切なこと。この先も昔からの技術はそのままに、時代ごとに愛され続けるひな人形を家族で作り続けていきます。

問合せ:広報課へ
【電話】2935-3765

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