■酒皶(しゅさ)
酒皶とは、赤ら顔のことで、顔が赤くなってニキビ様の丘疹(きゅうしん)をつくり鼻も赤くなって、最後には鼻の形も変形してくる病気をいう。原因ははっきりしないが、美容上の悩みは大きく、酒の飲みすぎとされたり、トウガラシの食べすぎのためといわれてきた。
現在でも酒のみに赤ら顔が多いと俗に思われているが、病源候論の中では、「飲酒による熱勢、面を衛って、風冷の気にあい、あいうちで生ずる所なり」と説明されており、その説明が現在まで生かされているようである。安土桃山時代の書には、酒皶という語が認められ、現代の皮膚科の教科書に取り入れられているのである。
いまだによい治療法もなく、ただからかわれてばかりいるようで、気の毒な気がしてしまう。芥川龍之介の短編の「鼻」を思い出す人も多いであろう。こういった体質的な病気は、くよくよしないでかえって居直った方がよいのかもしれない。
酒を飲まない人でも赤い顔の人は多いのだから、どうも酒飲みを思わせる酒皶という名前は少し適当でない病名であるかもしれません。
医師 小堀洋一
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