■経口避妊薬と人工妊娠中絶薬
妊娠中は、新たに妊娠しない。
当たり前のように思うかもしれませんが、これをヒントに考えだされたのが、経口避妊薬(ピル)です。特殊な成分ではなく、卵巣から分泌される2つの代表的なホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)を妊娠している時と同じ水準になるように服用するものです。卵巣が妊娠していると錯覚して、卵子を作らなくなり、妊娠しなくなります。避妊に対する有効率は、ほぼ100%です。
最近日本でも認可された人工妊娠中絶薬は、前述した卵巣から分泌される2つのホルモンのうちの1つ(黄体ホルモン)を、働かなくする薬剤です。このホルモンは妊娠を維持するのに欠かせないものですが、胎盤から十分な量が分泌される前の時期(妊娠9週以前)で使用が認められ、中絶に対する有効率は90%を超えます。
妊娠という生物の根源的な営みが、数少ないホルモンによってコントロールされているのは、興味深いと考えます。
医師 中村秀夫
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