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行田歴史系譜361

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埼玉県行田市

■資料がかたる行田の歴史61
▽足袋屋の家訓〜橋本家の「店之条目(たなのじょうもく)」
江戸時代の商家では、経営方針や財産の維持などについて決めた家訓を作成する家がありました。行田町の商家でも、最大の足袋屋であり「橋喜」の名で知られた橋本家が家訓を遺しています。
表題は「店之条目」で、作成されたのは嘉永5年(1852)6月、表紙には「他見無用の事に候也」と書かれており、一族や従業員以外には秘密とされていました。内容は大きく3つに分かれ、最初に総論に当たる「店法度作法(たなはっとさほう)并(ならびに)異見之事(いけんのこと)」があります。「この掟書を読む時は、皆で集まり行儀を正して、内容をよく聞き守るように。誰であっても決まりを軽んじ、我侭(わがまま)を行えば、解雇する」と、この条目の重要性を説くことから始まります。さらに「これは店の為だけでなく、よい商人になっていく元となる。店の為ばかりと思っていたら大きな間違いである」と、この家訓はよい商人となるためにも必要であると記しています。
続いて従業員の商いや私生活での禁止事項を列挙した7カ条からなる「法渡之事」があります。無断外出・外泊の禁止、博奕・賭け事の禁止、真面目でない者の雇用禁止、内密で行う個人的な商いの禁止、泥棒や火事に注意すること、風の強い夜は夜番をすること、髪を整え、歯を磨き、鏡を見て、言葉遣いは乱暴にしないことなどが記されています。
次に、従業員が商いの上で心掛けることを列挙した「作法之事」14カ条があります。御公儀の決まりを守ることや、従業員がお金の貸し借りや保証人になることの禁止、利益が少なくても売れるものを仕入れること、在庫を抱えないこと、支配人は店を離れず仕入れや品物の過不足を常に注意すること、などが列記されています。
行田町の足袋屋でこれだけまとまった家訓を残した家は、今のところ他に見当たらず、経営哲学や方針、服務の規定などを具体的に知ることができる貴重な史料となっています。
(郷土博物館 鈴木紀三雄)

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