■肺がん
越谷市医師会 越谷誠和病院 松村輔二(まつむらゆうじ)
本邦では高齢人口の増大に伴い肺がんの増加が続いています。がん死亡の臓器別では肺がんがトップ(20%)となっており、毎年7万4,000人が亡くなっています。
肺は大気から酸素を体内に取り入れ二酸化炭素を排出する臓器なので、大気中の有害物質が次第に肺に沈着して発がんを促すことになります。長く使っているエアコンにほこりが詰まる様子をイメージすると分かりやすいと思います。肺がんの原因の第一は喫煙です。喫煙者のリスクは非喫煙者の4倍以上で、男性の70%、女性の20%が喫煙による発がんとされています。夫が喫煙者の場合、妻のリスクは2倍になります。本邦でも近年は禁煙が進み、昭和時代の男性80%から令和時代は25%まで減少してきました。肺がん予防の観点からも望ましいことであり、将来的に肺がんの減ることが推定されています。しかし禁煙後にリスクが非喫煙者と同じになるには20年を要することも知られています。
肺は空気と血液が出入りする複雑な構造をしており、他臓器より多い40種類以上の細胞で構成されているため多種多様ながんが発生します。また予備力が大きく肺内部に知覚神経が分布しないため、腫瘍ができても肺表面に達したり太い気管支に浸潤しないとせきや痛みなどの症状が出てきません。症状を伴う場合の多くはすでに進行がんとなっています。
肺がんはこれまで難治がんとされてきましたが、手術、放射線、化学療法、免疫療法などの進歩により近年治療成績は大きく向上してきました。しかし現状では発見時に手術できる方は1/3にとどまっており、早期発見・早期治療のためには健診受診が大切です。健診発見の肺がんの80%は治癒可能です。2022年の全国の肺がん検診受診率は、男性53.2%、女性46.4%で、国の目標とする60%には届いておりません。現状では、肺がんの発見経緯は、「他疾患観察中に偶然発見」46%、「症状受診を含むその他の経緯」36%で、「健診・健康診断・人間ドック」は15%にとどまっています。40歳以上の方は年に一度は、住民健診、職場健診などで胸部X線写真撮影を受けるようにしましょう。
問合せ:越谷市医師会 越谷誠和病院
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