■なんで歯の治療は痛いの?
越谷市歯科医師会 歯医者の杜 森俊道(もりとしみち)
よく歯科医院で「キーン」という音を聞かれる方は多いと思います。虫歯を治療するときに歯を“削る”あの音です。虫歯で痛いのも嫌ですが、削る音や治療中の痛みも歯医者が嫌がられる大きな要因の一つだと思います。
あの痛みは歯の中に神経が存在しているからです。歯の神経は「歯髄」と呼ばれる柔らかい組織の一部で、血管と神経が通っています。これにより、歯が痛むときにその痛みを感じることができます。歯の神経が痛む原因はさまざまですが、虫歯が進行して歯髄に達した場合や、歯の根元に炎症が起きた場合などがあります。痛みを感じたら早めに歯科医に相談することが大切で、早期治療が予後を大きく左右します。
一方で、美容院や理髪店で「チョキチョキ」と表現されるのがはさみの音ですが、同じ鋭利な道具でもあまり恐怖を感じません。これは、爪や髪の毛には神経が通っていないので痛みを感じないからだと思います。爪や髪の毛にはケラチンというたんぱく質が含まれており、生きている細胞の活動によって生成されますが、実際に伸びている部分は死んだ細胞の集まりです。だからこそ、切ったりしても痛みを感じることはありません。爪や髪の毛が伸びる仕組みは、栄養状態やホルモンバランス、遺伝などの要因によって影響されます。歯は主にエナメル質、象牙質、歯髄から成り立ち、エナメル質は体の中で最も硬い物質です。これに対して、爪や髪の毛はケラチンというたんぱく質でできているため構成物質が異なります。
それぞれの違いが、歯、爪、髪の毛の役割にどう関わっているか考えてみると、歯はしっかりとした構造を持ち、食物をかむという機能を果たします。一方、爪や髪の毛は保護や感覚の補助などの役割を担っています。早く嫌な音がしない歯の世界が来ることを願っています。
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