■大切な人を失った家族の想(おも)い
身近な方を自死で亡くした方は、大きな衝撃を受け、さまざまな想いを抱えています。市内には、そのような方が想いを分かち合い、話ができる場所があります。
自死遺族分かち合い・支えあいの会「おおきな木」代表のH・Mさんに想いを話してもらいました。
▽想いを話す場所が欲しかった
私は、約18年前に父を自死で亡くしました。以前は市内にあった遺族会に参加していましたが、会がなくなってから話をする機会がなくなってしまいました。
そこで、友人たちに自分が自死遺族であることをかなり勇気を出して伝え、「自死遺族の会を作りたい」と声をかけました。快く資金面や場所の確保等のサポートをしてもらい、9年前に「おおきな木」を立ち上げることができました。友人たちが実際に分かち合いの場に出ることはありませんが、今でも縁の下からサポートをしてもらっています。
▽“対話”をすることで寄り添いたい
毎月第3木曜日に開催している分かち合いの会は、リモートではなく対面で行うことにこだわっています。顔を見て話を聴くことで信頼関係が生まれ、本音を話せるようになると思うのです。
最初は「話を聴くだけでもいいですか」と言って参加した方も、他の人の話を聴くうちに自分の中の思いを打ち明けるようになって、少し先が見えたような表情で帰られたこともありました。
県内近郊にも、数は多くないですが遺族会があります。それぞれ会の特色があるので、ご自身が落ち着き、安心して話ができる会を見つけることができれば幸いです。私もどこまで寄り添えるのか不安はありますが、できる限り対話をし、会を継続できたらと思っています。
▽時薬(ときぐすり)より人薬(ひとぐすり)。何年もたってから人に話してようやく一歩を踏み出せる人もいます
会にはさまざまな状況の方が参加しています。家族が自死したと誰にも言えずに一人で抱え込んでいたり、家族同士でも本音を話せずにいたり。事後間もなくいらっしゃる方もいれば、10年以上たってからようやく向き合えた方もいて、参加のタイミングはそれぞれです。
この痛みは時がたったからといってなくなるものではありません。一生付き合っていくものだと思います。だからこそ、人に話すことで少し気持ちがらくになれたり、一歩踏み出せるようになることもあります。
▽自死のあと残された家族がいて、生活していることを知ってほしい
現在も、父はなぜ自死してしまったのか、「どうして、何で」の思いがあります。もっと話を聴いてあげればよかった。あのときああしていれば、父は自死を選ばなかったのではないか…とずっと後悔と自責は続いています。だからこそ、これからは人の話をきちんと聴かせてもらいたい、と思っています。
今、死にたい、消えたいと考えている人がいたら、勇気を出してその気持ちを信頼できる人に打ち明けてほしいですね。画面越しではなく、実際に口に出して話をしてほしいと思います。
そして、当事者ではない人も、自死は他人事だと思わないでほしいです。自死遺族がそこにいて、何を思い生活しているのか。その人の気持ちを理解してほしいとは言いません。あなたにも同じ思いをしてほしい、ということではないので。ただ、身近に自死遺族の方がいて、その方がどんな想いで生きているかを想像してみてほしいと思います。
▽分かち合いの会
日時:原則毎月第3木曜日、14:00~16:00
会場:レンタルフロアkugisei(越ヶ谷1-4-5釘清商店2階)
対象:家族・身近な方を自死で亡くし、自身で参加を希望する方
参加費:100円(飲み物は各自お持ちください)
申込み・問合せ:こころの健康支援室
【電話】963-9214
■越谷市の取り組み
市では、自殺対策強化月間に下記のイベントを行います。また、簡単にできるセルフ・メンタルヘルスチェックを紹介します。
▽自殺予防ポスターの掲示
子ども・若年者の自殺予防啓発を目的に、市内小・中学校の児童・生徒を対象に「こころの健康に関する図画コンクール」を実施し、最優秀作品でポスターを作成しました。自治会掲示板等に掲示していますので、ぜひご覧ください。
▽こころの健康状態をチェック「こころの体温計」
ストレスは自分でも気付かないうちにたまり、時には病気につながってしまうこともあります。こころの不調も体の不調と同じように、早めに対処することが大切です。
チェックは本紙記載の二次元コードからご覧ください。
▽「いのちを大切に!」美術作品展
多くの方に「こころの健康」について関心をもってもらうため、東武鉄道、市内小・中学校の協力のもと、駅構内展示スペースに美術作品を展示します。
展示期間:3月中(各駅で異なります)
展示場所:越谷駅、大袋駅の構内展示スペース
問合せ:こころの健康支援室(第三庁舎1階)
【電話】963-9214
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