■帯状疱(ほう)疹後神経痛
越谷市医師会 おおさと痛みのクリニック 金久保吉壯(かなくぼよしたけ)
帯状疱疹という病気を皆さんは聞いたことがありますか?最近はテレビでもワクチンの接種普及CMを見ることが多くなってきました。また、皆さんの周りにも帯状疱疹をり患したという方も少なくないのではないでしょうか。しかし、帯状疱疹という皮膚疾患よりも、り患した方の多くの人たちを悩ませているのが、帯状疱疹後神経痛と言われる疾患です。
そもそも、帯状疱疹とは皆さんが幼い頃にり患した水痘(水ぼうそう)が原因となるウイルス性疾患です。水ぼうそうは治療や免疫獲得により症状が消失します。子どもの皮膚の再生スピードはとても早く、ほとんどが痕を残すことなく消えてしまいます。しかし、この原因となっている水痘帯状疱疹ウイルスが体から完全消失したわけではありません。ウイルスは活動性を失ってもなお体内に存在し続けることができるのです。そしてその多くが脳や脊髄といった神経細胞に隠れるように身を潜めます。このウイルスが、あるきっかけで再燃を始めて活動性を取り戻すときに、その身を潜めていた神経に沿って活発化していくため、帯状の皮膚症状を引き起こすため帯状疱疹と言われているのです。そして、その時に神経細胞も障害していくので、強い神経痛を伴います。これが帯状疱疹後神経痛です。
症状は、「ピリピリ、ズキズキとした痛み」です。痛みの強さの大小はさまざまですが、衣服がこすれただけでも痛みがあるので、寝ることさえできない方も多くいらっしゃいます。皮膚症状が消えてもなお、この症状だけが延々と残ってしまっている患者さんも少なくはありません。治療の主軸は鎮痛剤、特に神経障害性疼痛(とうつう)に対する鎮痛剤が有効とされています。プレガバリンやミロガバリンという鎮痛剤ですが、副反応としてふらつき、めまい、嘔気などの症状やむくみなどが見られることがあります。
私どもの施設ではこの治療のほかに、体温をあげて鎮痛効果をもたらす漢方薬の処方、温熱効果により疼痛を和らげる物療治療を取り入れておりますが、特殊治療として障害された神経をターゲットに鎮痛効果のある薬物を注射してくることで選択的に鎮痛を施すことのできる神経ブロックを行っております。帯状疱疹後神経痛の多くは、数週から数カ月で症状消失をしていきますが、何年もこの痛みと闘っている患者さんもいらっしゃいます。苦しんでいる患者さんに携わっていると、帯状疱疹そのものを引き起こさないようなワクチンの接種がテレビCMでも推奨されていることは、納得のいく話であると痛感しております。
「50歳を過ぎたら帯状疱疹ワクチンを」皆さんも考えてみてはいかがでしょうか?
問合せ:越谷市医師会 おおさと痛みのクリニック
【電話】975-3000
<この記事についてアンケートにご協力ください。>