■認知症とは?
越谷市薬剤師会 会長 メープル薬局越谷店 中村幸弘
認知症は高齢化社会において重要な健康課題の一つであり、その治療薬は患者とその家族の生活の質を向上させる重要な役割を果たします。薬剤師として、市民が認知症治療薬を正しく理解し、適切に使用するためのサポートを行うことは非常に重要です。ここでは、認知症治療薬について基本的な知識と注意点を解説します。
認知症治療薬は、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、主に認知症の種類や進行状況に応じて処方されます。現在、認知症治療に用いられる薬剤には大きく分けて2種類あります。一つは脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を抑制する「コリンエステラーゼ阻害薬」で、ドネペジル(商品名…アリセプト)やガランタミン、リバスチグミンなどがあります。もう一つは、グルタミン酸の過剰な刺激を抑える「NMDA受容体拮抗薬」で、メマンチン(商品名…メマリー)が代表的です。
これらの薬は認知機能の低下を一時的に緩やかにする効果が期待されますが、認知症を根本的に治療するものではありません。重要なのは、早期に適切な診断を受け、必要に応じて薬物療法を開始することです。薬の効果には個人差があり、患者によっては副作用が生じることもあるため、定期的な医師の診察や薬剤師への相談が欠かせません。
認知症治療薬を服用する際には、いくつかの注意点があります。例えば、ドネペジルは消化器系の副作用(吐き気、下痢など)が起こることがあるため、服用後の体調変化に注意する必要があります。一方、メマンチンはめまいや頭痛が報告されており、特に高齢者では転倒のリスクを考慮することが重要です。薬剤師は、患者や家族にこれらの副作用の可能性を説明し、服用スケジュールや体調管理について助言を行います。
また、認知症治療薬の効果を最大限に引き出すためには、薬だけに頼らず、生活習慣の改善や家族のサポートも重要です。食事や運動、社会的なつながりを維持することが、認知機能の維持に役立つとされています。薬剤師は薬の専門知識を生かしながら、こうした生活全般に関するアドバイスも提供できます。
認知症治療は長期にわたることが多く、患者だけでなく家族も支援が必要です。薬剤師は、薬の正しい使い方を指導するとともに、不安や疑問に寄り添い、地域社会全体で認知症患者とその家族を支える役割を担っています。認知症治療薬について分からないことがあれば、気軽に薬剤師に相談してください。
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