■毛蟹の話
独身時代、旅行が大好きで姉や友達と度々出掛けました。日本交通公社発行の時刻表を丹念に調べ、スケジュールを組む作業はこの上ない至福の時間でした。あれはたしか昭和43年だったと思います。女二人の気儘旅に北海道へ10日間行きました。場所は忘れてしまいましたが、丁度昼になり昼食を市場でしようと出掛けました。たぶん地元の人に教えていただいたのだと思います。そこは蟹だけを扱う市場でした。値段を見てびっくり、なんと毛けがに蟹が一杯500円なのです。当然一杯ずつ買い求め昼食。そのおいしかったこと。忘れられない味として今も残っています。あれから半世紀、毛蟹は高嶺の花となりました。今、家族や友人にその話をすると皆半信半疑。あまり話題にしなくなりました。ところがある日のこと、新聞を読んでいたら読者の投稿の中に500円の毛蟹の話が載っていたのです。その方は私と同学年の男性で、北海道のおばさんの家に泊まりに行くと、おばさんが500円の毛蟹をバケツ一杯買ってきてくれて腹一杯食べた、あの時代が懐かしいと綴っていました。時代を共有する人が居たことに大変感銘したのは言うまでもありません。今漁業は年々漁穫高が減り続け大変だとの話が聞かれます。庶民の魚として親しまれてきたサンマやスルメイカが私達の口に入りづらくなりました。一次産業の行く末を多くの方々が心配しています。感謝
「星うるむ 一夜もあらず 冬早」
長瀞町が生んだ女流俳人 馬場移公子
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