■自分を看取ってほしいと思えるお医者さんを見つけること
かかりつけ医や在宅医療について、実際に鴻巣市で訪問診療を行っている大塚医院院長の大塚先生にお話を伺いました。
大塚医院 院長 大塚健二先生
―かかりつけ医の仕事はどんなものです
かかかりつけ医の仕事は、患者さんに対して一つの診断を出せばいいというものではなく、患者さんの家族構成や生活環境、経済状況といったバックグラウンドを把握したうえで、その患者さんと今後どうしていくべきかを一緒に考えていくことだと思います。そのため、総合診療医やファミリードクターとも呼ばれています。
―かかりつけ医はどのように選べばいいですか
初診でかかりつけ医になるということはまずありません。何回か通院を繰り返していく中で、「この先生は信用できるな」「この先生なら自分の身体を任せられるな」と思えるお医者さんがいたら、かかりつけ医に選んでいいと思います。
―かかりつけ医として大事にしていることはありますか
患者さんのバックグラウンドをなるべく知るようにしています。例えば高齢の患者さんの血圧が高くても、家族関係についてよく知っていれば、「また家族とケンカしたの?」と確認することができ、高血圧が病気によるものか、ストレスによる一時的なものなのか判断することができます。
―在宅医療ではどのような患者さんを診ていますか
褥瘡(じょくそう・床ずれ)や脳梗塞、看取りといった患者さんが多いです。治療をする際は、患者さんと家族の考えをよく聞き、どうしてほしいかという点を大事にしています。
―在宅医療の今後についてどのようにお考えですか
今後、高齢者の増加に伴って、在宅医療もどんどん増えていくと思います。かかりつけ医として担当している高齢の患者さんが、通院できなくなり、在宅医療に移行するケースが多いです。
また、コロナ禍以降、鴻巣市の自宅で最期を迎えたいという、看取りを希望する患者さんが増えてきている印象があります。
在宅医療でお困りの際は、在宅医療連携センターに相談するのもいいと思います。コーディネーターの方が、患者さんと医師の間で調整をしてくれるので、医師としても助かっています。
―市民の皆さんに伝えたいことはありますか
皆さんには、元気なうちに自身の将来について家族と話し合い、人生のどこかで一度、自分を看取ってほしいと思える信用できるお医者さんを見つけてほしいと思います。
■鴻巣地区在宅医療連携センター コーディネーター 伊藤さん
▽患者と医師をつなぐ
鴻巣訪問看護ステーションで26年間、訪問看護師として働いています。平成28年に鴻巣地区在宅医療連携センターが設置されてからは、患者さんと医師をつなぐコーディネーターとしても働いています。
コーディネーターとして大事にしているのは、丁寧によく話を聞いて、患者さんが何を必要としているのかくみ取ることです。
ただ医師を紹介するのではなく、その患者さんがどんなことに困っているのか聞き取ることで、患者さんの抱えている問題の本質に気づくことができ、結果的に患者さんの病状や性格に合った医師を紹介できることにつながります。しかし、「今、具合が悪いのですぐに来てくれる先生はいないか」という相談は、対応が難しいです。
▽自分の最期を考えておくこと
日本人は縁起でもないといって、人生の最期について考えるのを敬遠しがちです。しかし、元気なうちにこそ、自分がどんな最期を迎えたいのか考える必要があると思います。
家から出られなくなる前に、身体が動かなくなる前に、家族やかかりつけ医と自身の希望する医療やケアについて繰り返し話し合い、共有しておくことが大切です。
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