■見えないものを見る
毎年好評のイラストコンクール、2年前のテーマは「見えないけれどあるんだよ」でした。作品の内容は様々で、無限の宇宙、人の心など多岐にわたっています。子どもから大人まで市民の皆さんの想像力、発想力は豊かで素晴らしい作品ばかりでした。
このテーマで連想するのは金子みすゞさんの詩「星とたんぽぽ」。金子さんは「見えないけどあるもの」として昼には見えないが夜になると輝く星、散ってじっと春を待つたんぽぽの根を挙げます。見えないものに気づき見る楽しさや大切さを教えます。
植物を育てていると見えない土の中に興味が湧きます。草を取りよく耕した土と放りっぱなしにした土では作物の成長に大きな違いが出ます。また、堆肥を散き土づくりをするとよりおいしい作物が育ちます。微生物の働きや化学反応による土壌の変化が起きて植物に大きな力を与えているのでしょう。
人の心もなかなか見えないものです。例えば、多くの思春期の子どもは独立心が育まれ親の言うことは何ともうるさく、往々にして「ほっといて」という気持ちになりがちです。しかし歳を重ね人生経験を経ていくとしだいに親心がわかり見方が変わる時期が来ます。特に社会に出る、子どもが生まれる、老いた親が亡くなると、今まで見えなかった親の心情の深さが身にしみてわかります。一方、親も子どもを育てる過程で、子どもに自分とは違う個性や長所を発見し親自身の成長につながります。見る力の親子間交換ですね。
世の中には人知れずいろいろな善い行いを積んでいる優しく強い人もたくさんいます。想像力を働かせて見えないものを発見しそこに心を寄せると、幸せ感と安ど感が増します。
見えないものを見る力、もっと身につけたいものです。
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